“本当”に宇宙に連れていく宇宙飛行士育成ゲームアプリ--NASAも協力

 テクノロジが発達し、イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」など、「人間を宇宙へ連れて行く」ことを目標を掲げる企業が現れる中、宇宙飛行士への道はより開かれるべき時代となっている。

 もし自分の子どもが、「将来は宇宙飛行士になりたい。そのために何をすればいい?」と聞いてきたとして、あなたは答えられるだろうか。きっと多くの人は、その壮大な夢を実現するためには何から始めれば良いか、見当もつかないのではないか。

 イーロン・マスク氏と似たような想いを持ったあるフィンランド人の起業家が、11月30日から2日間、フィンランドの首都ヘルシンキで開催されたスタートアップカンファレンス「Slush」で、驚くべきプログラムを発表した。なんと、誰でも宇宙飛行士になり、宇宙へ行くチャンスを掴めるというものだ。

「スマホアプリ」から始まる宇宙飛行士への道

 フィンランド発のスタートアップ「Cohu Experience」が、2017年にスタートすると発表したプログラム「Space Nation Astronaut Program」は、スマートフォンアプリをインストールし、宇宙飛行士の適性を測るところからスタートする。

「Space Nation Astronaut Program」のロゴ
「Space Nation Astronaut Program」のロゴ

 このアプリは2017年初めにリリース予定で、現在開発の最終段階に入っている。ゲーム感覚で宇宙飛行士になるための適性や知識を測り、優れた結果を残すことができれば、宇宙飛行士になるためのトレーニングへの参加申し込みが可能となる。

 ゲームの内容は、宇宙飛行士に必要なフィジカル面の必要条件や、知性、ソーシャルスキルを問うもの。問題の開発には、実際にNASAで宇宙飛行士のトレーニングに携わる専門家も関わっている。

アプリ画面、宇宙飛行士に必要な知識をチェック
アプリ画面、宇宙飛行士に必要な知識をチェック

 高得点だった候補者が参加するトレーニングは、約半年におよぶ。3カ月間のバーチャルトレーニング、2週間のフィジカルトレーニング、そして3カ月間の撮影をともなうコンテストから成る。

 メンタル、フィジカル、ソーシャル、チームワークなどのトレーニングに加え、宇宙飛行士に必要な宇宙船の知識や操縦、国際宇宙ステーション(ISS)についても学ぶことになる。このトレーニングは、パートナー企業の協力のもと開発されている。実施と宇宙船の打ち上げを担当するのは、商業用ISSの建設を目指す「Axiom Space」。

 また、子ども向けのトレーニングプログラムの構築には、教育ツールの開発を専門とする「Fun Academy」が、トレーニングに必要な資料などの提供は「NASA」が、そして実験装置の提供は「Edge of Space」がそれぞれ担当する。宇宙に関心がある人たちを支援しようと、Cohu Experienceはこのプログラムにさまざまな機関を巻き込んでいるのだ。

選ばれた人の宇宙でのミッションは?

 アプリで高得点を取り、プログラムを無事修了し、最後に実施されるコンテストで選ばれた1人が、2017年年末に宇宙に向けて出発する。2018年以降もこのプログラムは継続される予定だ。

 実際に宇宙へ行って何をするのか。初回となる2017年は「弾道飛行」(大砲のように弧の軌道を描く飛行)がメインで、参加する宇宙飛行士の立場も「観光客」のようなイメージ。しかし、翌年以降はさらに長時間の飛行でISSを目指し、そこでミッションが与えられるなど、より宇宙飛行士らしい位置づけとなる。2017年に選ばれた人は、翌年以降の宇宙飛行に参加するためのトレーニングへの参加資格も与えられるという。

 Cohu Experienceの創業者 兼 CEOのKalle Vaha-Jaakkola氏は、「今まで宇宙へ行ったのは人類の中でほんの一握りの人たちで、600人もいないほど。宇宙への道は、一部の裕福で、限られた国の人びとだけのものであってはならない」と、カンファレンスで宇宙への情熱を語った。

創業者兼CEO
「Slush」でアプリの説明をする創業者兼CEOのKalle Vaha-Jaakkolaさん
(「Space Nation Astronaut Prgram」のホームページより)

 同社は現在開発中のトレーニングについて米国の連邦航空局(FAA)から認定を受けるため、2017年に申請をする予定だ。また、最初はプログラムで選ばれる宇宙飛行士は1人としているが、徐々に人数を増やし、宇宙飛行の回数も増やしていくとしている。

 スマホアプリから宇宙飛行士が生まれるという意外性が、私たちにとって宇宙、そして宇宙飛行士という存在との距離を縮めてくれることを期待したい。

(編集協力:岡徳之)

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