ご指摘のとおりで、気をつけるべき点は多いですね。まずは、デジタルシフトといっても、今あるものを全否定して、新しいものをゼロから始めるわけではないということだと思います。変革というと、過去を否定して新しいものをドラスティックに、と考えてしまいがちですが、そうではないと思っています。あくまで、これまで培ってきた自社の既存サービスがベースとしてあり、そこにデジタル化が加わり、今までのサービスがより良いもの、より高付加価値のものになることだと思います。
また、この過程で自社の強みは何かを明確にしていくことが必要です。当社の場合で言うと、コンタクトセンターの現場を支えるオペレーション力や、スタッフの誠実さ、課題解決に向きあう真面目さといったものが強みになります。当社は、この人間系の強みと高度なIT・デジタル化を掛け合わせたハイブリット型を軸に、デジタルシフトを進めるようにしています。
今日のキャッシュを生む既存組織と、未来のキャッシュを生む新規組織間の対立は、どの企業でも同じでしょうがもちろん当社でも起こり得ます。担当者間での折り合いがつかないような場合、早めにトップが入って推進することも重要な役割です。また、適切なステップで変革が進んでいくように注視しています。これは、デジタルシフトに限ったことではないでしょうが、全社変革をする際には
と言ったプロセスを踏んでいく必要があります。このとき、2の成功体験づくりまでにあまり時間がかかってしまうとエバンジェリストも疲弊してしまい、改革も頓挫してしまうため、そうならないよう初速を上げていくことが欠かせません。
当社の事業領域がコンタクトセンターだけでなく、Webなど多様な顧客接点へと拡がってきたこともあり、昨年に現在の社名に変更しました。しかし、まだまだ新しい社名が浸透しきっていないことや、コミュニケーション全般の支援ではなく、コンタクトセンターの支援をやっている会社だと思われていることもあり、マーケティング力の向上に注力しています。また、デジタルシフトとマーケティングの推進と言うと、デジマ(デジタタマーケティング)を強化すると思われることもありますが、デジマはあくまでマーケティングの一部として捉えています。重要なことは、デジタルマーケティングが先ではなく、マーケティングが先でデジタルはそこに付随するもの。「マーケティング with デジタル」といった表現がより適切でしょう。
先ほども話しましたが、やはり、変革にはスピードが大事です。先ほどのステップで言うと、18年3月期までには、一通り全社展開ができあがっている状態までには持っていきたい。とは言え、デジタルシフトは、自分たちの都合ではなくあくまでもお客様のニーズに合わせて推進していくものなので、その点は忘れずに進めていきたいと思います。
“お客様のニーズに合わせた変革”はデジタル変革の重要なテーマとなっています。本連載の筆者等の共著による書籍「カスタマーセントリック思考 -真の課題発見が市場をつくる-」が発売中です。戦略の意思決定基準を「顧客」に置いた“マーケティングストーリーづくり”や“組織変革”について詳説しています。
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村澤典知
戦略コンサルタント。インテグレート執行役員。
一橋大学経済学部卒。トヨタ自動車、博報堂コンサルティング、A.T.カーニーを経て現職。国内大手企業を中心に、成長戦略の策定、新規事業開発、新商品/サービス開発、デジタル変革、マーケティング組織再編等、10年間で約100に及ぶプロジェクトに従事。「カスタマーセントリック思考」、「最新マーケティングの教科書2016」等、執筆多数。
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