前回のコラムでは、業界や業種を問わず、勝ち続ける上でどの企業でも「デジタル変革」が求められるようになってきていること、また、そのデジタル変革は、小手先のデジタルマーケティング施策や、ツールの導入のようなものではなく、業務プロセスや組織体制など、より深く踏み込んだ抜本的なものが求められつつあることを伝えた。
また、デジタル変革を進める上で、自分たちの組織はどの段階にいて、何に取り組むべきかを判断する、デジタル変革の診断カルテを紹介した。今回は、この診断カルテの7つの視点(目的、業務範囲、中長期戦略、経営コミット、業務プロセス、組織・評価、マインド)をベースに、いま地球上で最もデジタル変革をダイナミックに進めている企業の1つである、GEを例に見ていこう。
まず、最初に確認すべき視点は、「目的」だ。デジタル変革はあくまで手段と認識し、顧客満足度の向上を主軸にしているか、また、バズワード(AI、IoT、DMPなど)から入らず、顧客満足度の向上や競争優位性の獲得のために何をすべきか、といった検討をしているかが重要になる。GEでは、この点は非常に明確だ。
「デジタル化は『インダストリー4.0』や『インダストリアルインターネット』『IoT』など、さまざまな呼ばれ方をしていますが、名前は重要ではありません。唯一重要なのは『生産性』です。1991年から2010年まで、インダストリアル(産業界)における生産性向上は年平均で4%のペースでした。しかし今はわずか1%にまで低下しています。産業界は生産性を加速(ブースト)する何かを求めています。その答えがデジタル化です」(ジェフ・イメルト会長兼CEO 出典:『日経コンピュータ』2016年09月01日号 特集記事)というように、デジタル化は手段として、生産性向上を唯一の目的に位置づけている。
2つ目は、「業務範囲」だ。デジタル化というと、デジタルマーケティングで終始している企業が多いが、ビジネスモデルやオペレーションなども変革しているかがポイントになる。GEでは、従来は、産業用機器の販売と保守サービスを軸としたビジネスモデルであったが、それを転換し、産業用機器のデジタルサービスをビジネスの主役に据えた。
産業用機器から集めたビッグデータを分析して、機器が生み出す成果(アウトカム)を最大化することを目指す。例えば、航空機エンジンなら、従来は故障を直すのがサービスだったが、デジタル化したサービスでは、センサーデータから航空機の飛行パターンを分析し、航空会社に燃費効率を改善する飛行プランを提案するようにシフトしている。
デジタル変革は、一朝一夕で終わるようなことはなく、短くても数年はかかる。そのため、3つ目の「中長期戦略」は必要不可欠だ。中長期的なロードマップを描き、各ステージでの位置づけ・施策を明確にしているかがポイントになる。
GEの場合、リーマンショック後の金融・ファイナンス業から製造業への事業シフトとともにデジタル変革を開始しているが、2020年までにソフトウェアでの売上を150億ドル(約1.5兆円)まで伸ばし、ソフト企業の世界トップ10入りを実現することを目標に、各段階でどのような取り組みに注力していくかを規定している。
また、それと表裏一体で必要になるのが、4つ目の「経営のコミット」だ。専門部署に一任せず、経営者自らが旗振り役として積極的なサポートをしているか、社内外へ積極的に情報発信し、変革の雰囲気づくりをしているかがポイントになる。
GEでは、デジタル化を「GE史上最大の変革」として経営の最重要アジェンダに位置づけ、イメルトCEO自らが非常に積極的に情報発信をしている。GE社内での説明だけでなく、社外発信を強化することでメディアからも取り上げられ、注目されることで従業員の変革を意識づけている。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力