ビジネスチャットツール「チャットワーク」を開発するChatWorkは、各社との業務提携や破格の資金調達なども後ろ盾にしつつ、順調に国内シェアを拡大している。導入企業数はすでに11万6000社におよび、株式上場も視野に入れ、「日本発のITサービス」をグローバルへ向けて普及させている途中だ。
そんな中、2016年9月末には新サービスの「ChatWorkコンシェルジュ」をリリースし、新たな有料プラン「エンタープライズプラン」の提供も開始した。この2つのサービスはChatWorkにおいてどのような意味をもつのか。またビジネスチャットツールとして日本最大のユーザー数を誇るチャットワークが市場に受け入れられている理由や、グローバルに向けてサービス展開も図るその原動力はどこにあるのだろうか。同社代表取締役の山本敏行氏に聞いた。
チャットワークは2011年にサービスを開始し、2016年10月末時点で11万6000社にご利用いただくようになりました。最初はIT企業を中心にユーザーが広がり、今もそこはどんどん拡大しているのですが、実は最初からダーゲットにしていた非ITの業種、たとえば弁護士、税理士、行政書士のような士業や、建築業、飲食業、介護の現場など、普通ならITをそこまで使わないであろう業種のユーザーがかなり増えてきています。
そのような方々に使っていただきたいという思いでチャットワークを開発し始めた経緯もありますので、働き方が変わり、収益も上がって、皆さんに「こんなに便利になるんだ」と感動していただけているのは、我々としても非常にやりがいを感じるところです。
やはり士業がすごいですね。士業の方の間では、「使っていない=遅れている」くらいの感じになってきました。チャットワークは、対面でお客様に会ったりする業種に向いているんだと思います。自分の手で作業して、電話して、訪問して、書類を受け取って、みたいなやりとりをチャットに変えるだけで、生産性が3倍とか5倍になるんです。
今までだと、1人の税理士さんが対応できる顧問先は20社くらいだそうです。ところがチャットワークを使うと、その3倍の顧問先があっても大丈夫と聞きます。そうすると、単純に売上が3倍になりますし、すべての情報がチャットワークに集約されることになります。顧問先ごとにグループチャットを作っておけば、そこで簡単にやりとりできて、データも全部残っているから顧問先の担当者がもし変わったとしても、過去のやりとりが全部見える。
ということで、引き継ぎも楽になって、ストレスも軽減される。タスク機能もありますから、無駄な作業やコミュニケーションも減りますよね。社内はもちろん社外とのやりとりにもチャットワークが向いていますので、言った言ってない、やったやってない、忘れていました、というのもなくなるんです。
いろいろなチャットツールが登場してきていることもあって、エンジニアの方はエンジニア向けのチャットツールを使うことも多いようですが、同時に会社全体としてはチャットワークを使う、というところも増えています。用途によってチャットツールの役割は全然違うよね、と。上場しているIT企業でも、2つ使っちゃうのもいいんじゃないか、という流れになっています。
以前なら、社内ツールはコミュニケーションが分散しないよう一本化すべき、みたいな雰囲気があったと思います。とはいえ個人レベルではFacebookメッセージやLINEを使う場合もあるでしょう。どうしても取引先との関係で指定のツールを使わなければいけない、というケースもあるはずです。複数のチャットツールの併用や使い分けというのが、昨今の面白い動きとしてありますね。
チャットワークは日本で最もユーザー数の多いチャットツールですし、他のツールを競合視してどうする、ということはあまり考えていません。一応、他の動向は気にはしていますが、どちらかというと、まだ使っていない人たちにどう使ってもらうかがメインテーマですね。
非ITの人たちをターゲットにしているところもあって、「メールでも大変なのに新しいチャットツールはなおさら分からない」という人の意識を変える方が大変で、僕たちとしてはそこにフォーカスしています。LINEもなかった5年前からずっとその戦いです。最近は「仕事でチャット?何それ?」みたいなところから、ケータイメールがLINEになり、仕事もチャットだよね、という雰囲気になり、周りが大きく変わってきた感じがしますね。
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