10月末から11月頭にかけて、携帯大手3社の上期決算が発表された。携帯電話を中心とした通信事業については、各社ともに増収・増益を維持しているが、競争の軸が低価格サービスへシフトしたことや、総務省が端末の割引販売に対して一層厳しい姿勢を見せるなど、3社を取り巻く環境は決して良好とは言い難い。そうした中で、各社はどのようにして売上を伸ばしているのだろうか。決算説明会の内容から振り返ってみたい。
先陣を切って、10月28日に決算を発表したのはNTTドコモ。同社の決算内容は、営業収益が前年同期比3.3%増の2兆2883億円、営業利益が前年同期比26.6%増の5855億円と、前四半期に続いて好調な決算となっている。
業績好調の要因は、償却方法の変更などいくつかの特殊要因も含むものの、本質的には通信事業とスマートライフ領域の双方が伸びていることが大きい。通信事業に関しては、「ドコモ光」が継続的に伸びていることに加え、携帯電話サービス自体も音声、データともにARPUが伸びている。あくまでドコモ光のARPUを加えた額になるが、すべてのARPUを総合した額も、業績を下方修正するなど経営に大きな影響を与えた「カケホーダイ&パケあえる」導入前の水準に戻ってきており、回復傾向が鮮明なことが分かる。
スマートライフ領域に関しても、「dマーケット」や「あんしんパック」、「dカード」の契約が順調なこともあり、着実に伸びているとのこと。その営業利益も609億円と、当初の年間予想の1200億円達成に向け、順調な伸びを示している。またコスト効率化も430億円の削減を実現しており、こちらも当初の年間予想が800億円であることから、順調に達成する見通しのようだ。
これらの好業績を受け、ドコモは営業利益の業績予想を、プラス300億円増の9400億円に上方修正することを発表。中でも通信事業は当初予想より200億円増額するなど、好調ぶりが際立っていることが分かる。同社では2016年度中に、2017年度の中期目標を1年前倒しで達成するとしていたが、同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は「達成はほぼ見込める」と自信を見せている。
その好業績に影響を与える可能性があると見られているのが、総務省の動向である。4月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出し、端末の実質0円販売が事実上禁止されるなどの影響が市場には出ているが、吉澤氏は「ガイドラインが出てすぐその後は販売数が落ちたと思ったが、第2四半期からはほとんど計画通りになってきている。ものすごく影響を与えることはない」と話す。
とはいえ、ガイドラインによるマイナスの影響が全く出ていない訳ではないようだ。吉澤氏は「ガイドライン後に、ワイモバイルやMVNOに番号ポータビリティでのポートアウトするなどの影響はある。そういう意味でいうと、ガイドライン前に戻っているかというと戻っていない」と話す。ガイドラインの影響によってユーザーの低価格志向が強まり、低価格のサービスにユーザーが流れていることが課題と見ているようだ。
今回の好業績を受け、吉澤氏は次の「Beyond 2020」に向けた次期中期計画の検討を開始したと話している。次の中期計画とそこで打ち出された戦略こそが、吉澤氏の体制を真に評価するものになることから、まずは中期目標の1年前倒しを確実に進めつつ、行政の影響によって逆風が吹く市場動向となる中にありながらも、新たなビジョンで明確な成長が打ち出せるかが問われるところだ。
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