Dragon Ash・Kjが語る「デジタルで音楽がなくしたもの、変わらないもの」--独占インタビュー - (page 2)

藤井涼 (編集部) 鍋坂樹伸(カメラマン)2016年10月18日 12時00分

 何買ったかな~、最近。ハイエイタス(the HIATUS)の新譜は買ったけど、友だちのことをこういうところで褒めたくないな(笑)。

 実は、ハイスタは出す前から知ってたんだよ。割と現場でいつも会うようなやつらはみんな知ってたし、なんならすでに聞いてるやつらもいて。ただ、あれはハイスタだからできる技だから、みんながコピーしようとしてもあんな成果は出せないし、ハイスタの魔法なんだよ。ただ何より、みんな(発売を)知ってたのに、こんなに情報過多な時代にそれが漏洩せずに、結果的にリスナーたちを本当にビックリさせることができたっていう、音楽業界の倫理観がすごいなって。「ハイスタ出すんだ」って言いたいじゃん、超言いたいじゃん(笑)。

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 たとえばさ、レコ屋(レコード屋)の子とか、ちょっと関係があってその話を知ってた人ってたくさんいたと思うんだよ。実際にハイスタと仲間なわけじゃないし、別に言ったってバレやしない。でも、そいつらも口をつぐんで、自分のことのように楽しみにしてさ、「ビックリさせてやろうよ、世界を」って感覚で、ハイスタのサプライズにみんなが乗っからないと、これは成り立たなかったと思うんだよ。

 そういう、みんなの愛とか倫理観とか、マナーがすごいなって思うんだよ。やっぱり、マナーがあればルールはいらないわけだから。(情報が)漏れなかったことが当たり前なんだけど、この世の中では奇跡みたいなことだなと思って。ロックというか、自分のいる世界は最高だなって実感したし、レコ屋の愛も感じるよね。

――改めて、情報過多の現代において、どのような音楽が求められていると思いますか。

 ちょっと重複しちゃうけど、いろんな人が人前に出るチャンスを得ている。ネット上が人前なのかどうかはわかんないけど、自分のアートを提示できるチャンスが増えているじゃない。ってことは、どんどん目新しさがなくなっていく時代でもあるよね。だから、アーティストやバンドマンとして一旗あげることが少し前よりは困難だと思う。でも、たとえば何ならiPhoneで撮っても、アイデアとスパイス次第でいいミュージックビデオを撮れたりするし、むしろ俺はそういうところに目を向けてるけどね。

 失ったものも、たくさんあると思う。こういう時代になって、いまはコンピュータで曲のレコーディングもしてるから、アナログレコーディングをしたことがないやつの方が多いだろうし。デジタルの方が全然便利なんだけど、アナログの音にはならない。だから、企業はアナログなシミュレーターをどんどん作ったりするけど、「いや、じゃあアナログにしたいんじゃん」みたいな。

 アナログにしたいんだけど便利にしたいっていうエゴだけなんだよ。ノスタルジーもあるんだろうけど、1回すごく便利になっちゃって、逆にそれが退屈になっちゃったみたいな時期だよね。本当は必要なものを作るべきなんだけど、基本便利なものを作る時代じゃん。便利なものって、本当はなくてもよかったんだよ。だから、必要なものは全部出きっちゃってるのかもしれない。

 それは音楽も同じなんだよね。もうこれじゃなきゃだめだってマテリアルは、全部机上に乗っちゃってるかもしれない。あとはその変化形で、こういうのもあるよってものがバーっと出てて、それでユーザーがコンフューズ(混乱)するっていうかさ。だから、名前のあるやつのCDとか音源はずっと回っていけるんだけど、新しいやつらは出るのが難しい。

 たとえば日本の映画って、めちゃくちゃクオリティが高くて、セリフとか描写も一番綺麗だと思う。でも、お金出す人が少し臆病になってるから、何かで評価を受けたものを映画化するってものばかりじゃん。ああなったらもう商業。それって、ものづくりを否定してる気がするし、本来なら新しいストーリーをそのために書くべきだと思うんだよね。エンターテインメントなんだけどアートって部分は、やっぱり残るか否かの瀬戸際だと思うよ。何が必要というよりは、この中でいかに光を見出せるかってことかな。全飽和状態だけど、それでも好きですって言える人がいるかってことだよ。

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