プレミアムインタビュー

ゲームに続く「第2、第3の柱を作る」--DeNA守安社長の“事業論”

DeNA代表取締役社長の守安功氏

 一時はモバイルゲームの会社という印象が強かったディー・エヌ・エー(DeNA)だが、ここ数年は遺伝子検査や自動運転、さらにはAIなど、ゲームとのシナジーにこだわらない幅広い事業領域に次々と参入している。

 そんな同社を率いる代表取締役社長の守安功氏とはどのような人物なのか。最先端の領域に挑み続ける「事業」、全社員向けの行動規範“DeNA Quality”を推進する「組織」、そして多趣味な「日常」について深堀りすることで、同氏の素顔に迫った。(全3回)。

 第1回は「事業」について。なぜ、ゲームを主力事業としている同社は、あえて知見のない自動運転やAI事業に本格参入したのだろうか。

「Pokemon GO」を生み出したかった

――DeNAはここ数年、ゲーム以外の領域に次々と参入しています。その理由を教えてください。

 もともと会社が大きくなったきっかけが、「怪盗ロワイヤル」というモバイルゲームのヒットなので、DeNAはゲームの会社と思われている方も多いと思います。ただ、われわれが創業した1999年に最初に開始したのは「ビッダーズ」というオークションサービスでした。それからショッピングモール型のECなど、さまざまなサービスを提供する中で、ゲームがヒットしたという経緯があります。

 そのため、一時期はゲームに注力していたのですが、やはりヒットタイトルが出せるかどうかによって、業績が上下するところがあります。そこで主力事業であるゲームに加えて、第2、第3の柱を作っていこうということで、いろいろなところに事業の幅を広げているのです。

――ゲーム領域では、Nianticが開発した位置情報ゲーム「Pokemon GO」が大ヒットしていますが、守安さんも実際にプレイしましたか。また、DeNAも任天堂と組んで、「どうぶつの森」などを開発中です。

 そこまでやり込んでいるわけではありませんがプレイしました。コレクション要素や強化と進化、バトルなど、基本的なサイクルはこれまでのスマホゲームとそこまで大きく変わらないと思うのですが、位置情報やARを使っていること、またポケモンという誰もが知っているゲームということもあり、本当に社会現象のような一大ブームになっています。これはすごいなと思いますし、改めてゲームの可能性が見えたんじゃないかなと思います。

2015年3月に任天堂との提携を発表した。同年7月に亡くなった任天堂元代表取締役社長の岩田聡氏(右)と。
2015年3月に任天堂との提携を発表した。同年7月に亡くなった任天堂元代表取締役社長の岩田聡氏(右)と。

 2015年の3月にわれわれも任天堂との提携を発表しましたが、亡くなられた岩田社長とその時にお話していたのが、いままでなかったような「あっ」と言わせるようなものを出したいよね、大ヒットと呼ばれるゲームを複数作りたいよねということでした。そういう意味では、任天堂との取り組みの中で、「Pokemon GO」みたいなものを生み出したかったという気持ちはあります。任天堂のIP(知的財産)は全世界の方が知っていますので、多くの方から面白いね、違うねという評価をいただけるようなゲームを作りたいと思います。

自動車産業は大変革する

――続いて自動車事業について聞かせてください。2015年6月に自動運転の無人タクシー「ロボットタクシー」を発表したのを皮切りに、自動運転バスを利用した交通システム「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」や、自動運転で荷物を届ける物流サービス開発プロジェクト「ロボネコヤマト」などを次々と発表しています。改めて、その狙いを教えてください。

 ちょうど1~2年くらい前でしょうか。ゲーム以外の第2、第3の柱を作りましょうという話をしていて、どの領域に参入するべきかを、いまの自動車事業の責任者である中島(執行役員の中島宏氏)を中心に考えさせたんですね。たとえば、農業とかホーム関係とかいろいろな領域が出てきた中で、やはり自動車がいいのではないかと。産業規模が大きいですし、これからすべてのクルマがインターネットに接続すると、さまざまなことが可能になっていくと思います。

2015年5月に自動運転事業に参入。DeNA執行役員の中島宏氏(左)と、ZMP代表取締役社長の谷口恒氏(右)
2015年5月に自動運転事業に参入。DeNA執行役員の中島宏氏(左)と、ZMP代表取締役社長の谷口恒氏(右)

 僕は自動車産業は「エネルギー問題」と「自動運転」を中心に、大変革をすると思っています。エネルギーは環境問題がありますので、今後はガソリン車から、電気自動車や水素自動車に変わっていきますよね。自動運転についても、何年後になるかは分かりませんが、まず間違いなく変わっていくと。その中で、これまでインターネットを強みに事業を展開してきたわれわれも、自動運転の時代に向けて何かしらのサービスのレイヤーの中に踏み込みたいということです。

――ロボットタクシーはZMP、無人バスは仏スタートアップのEasyMile、物流サービスはヤマト運輸と、それぞれ異なるパートナーを選んだ理由を教えてください。今後もパートナーは増えるのでしょうか。

 われわれは、自動運転の技術を持っていませんし、当然ながら車体を作るメーカーでもありません。そのため、他社の自動運転技術や車体、通信インフラなどを活用して、エンドユーザーにサービスをパッケージ化して届けるような“モビリティサービスプロバイダ”を目指しています。そのレイヤーでは、旅客輸送だろうと貨物輸送だろうと、ナンバーワンと呼ばれるような取り組みをしたいと思っています。

 自動運転の技術はさまざまなものがあると思っていて、車体の大きさや形態によって、技術の積み上げ方というか山の登り方が複数ありますので、それぞれに合ったものを使っていくべきなんだろうと思います。最終的にパートナーが同じになったりするかもしれませんが、最適なパートナーと組んで事業を展開したいと思っています。

“モビリティサービスプロバイダ”を目指すと守安氏
“モビリティサービスプロバイダ”を目指すと守安氏

 パートナーについては、現時点ではラインアップは揃ってきたなと思っています。3つとも、それぞれの事業規模自体が大きく成り得るものですので、いかにちゃんと形にしてサービスとして提供できるのか。これから実証実験をして実用化するとなれば、2020年などかなり足の長いものになっていきますので、ボーンと打ち上げ花火をあげるだけじゃなく、実際のサービスに落とし込んでいきたいと思います。

――無人タクシーや自動運転の宅配サービスは本当に実現できるのでしょうか。そのためには政府の協力も不可欠かと思います。

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