テクノロジの世界では、5年という月日は何世紀ものように感じられる。しかし、Appleに関して言えば、Steve Jobs氏の遺産は今も生き続けている。
Jobs氏は、世界で最も大きな利益を生み出す企業の1つであるAppleのカリスマ的な共同創設者で、2011年10月5日、すい臓がんとの長い闘病の末、死去した。56歳だった。
それから5年が経過したが、Jobs氏は、同氏の人生やキャリア、人柄を描いた数々の書籍や映画を通して、今も世間の注目を浴びている。Jobs氏はいつもカリスマ的で、物議を醸すリーダーだった。(世界中の熱狂的なAppleファンを含む)多くの人に愛されたが、同氏の激しい怒りを目の当たりにした人々からは憎まれることもあった。
米国時間2016年10月5日、Appleの最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏は、前任者のJobs氏と、同氏が世界全体に及ぼした影響を偲ぶツイートを投稿した。
"Most important, have the courage to follow your heart and intuition." Remembering Steve and the many ways he changed our world. pic.twitter.com/ONAuEoq3uU
— Tim Cook (@tim_cook) 2016年10月5日
「『最も重要なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことだ』。Steveのこと、そして、彼が多くの意味でわれわれの世界を変えたことを今思い出している」(Cook氏)
Jobs氏のApple在籍時代に、同氏のそばで働いていた人はほかにもいる。以下では、それらの人々が語ってくれた思い出の数々を紹介する。
AppleはデザイナーのClement Mok氏を1982年に雇い、1984年に発売した「Mac」のブランディングを任せた。Mok氏は1985年、Appleのクリエイティブサービスグループの共同マネージャーになり、法人および教育マーケティング担当クリエイティブディレクターの役割を果たした。同氏は、マーケティングや製品のパッケージに登場するAppleの象徴的な画像を考え出した人間の1人である。初期のMacの宣伝用資料で見られる、曲線的な図もその1つだ。
Appleがブランドアイデンティティとロゴを更新したときに、Jobs氏の名刺をデザインし直すこともMok氏の仕事の1つだった。
「私はSteveのオフィスに行って、『これが新しい名刺だ。印刷業者に送る前に確認してもらいたい』と聞くことになっていた」(Mok氏)
Jobs氏は、まじまじとその名刺を見た。「その時点では、彼が大学でカリグラフィーを学んだことを誰も知らなかった。Steveはさまざまな書体に神経質なほどのこだわりがあった。しかし、今でこそ分かるものの、われわれ、少なくともわれわれの多くは、彼がタイポグラフィにそこまで深い造詣を持っていることを当時は知らなかった」(Mok氏)
「彼は名刺を見て、『こことここは、カーニング(文字と文字の間隔)をもっと狭くした方がいいのではないか。ここは間隔が狭すぎる』と言った。彼がそうした些末なことの細部にそこまでこだわったことに私は面食らった。Steveはそれほど細部にこだわっていたのだ。私はその瞬間、彼に多大な敬意を抱くようになったと思う。私は『やあ、Steve。参考までに、これが君の名刺だ』と伝えるだけで済むと思っていた。だが、彼は長い時間をかけて確認した」(Mok氏)
ちなみに、Mok氏はJobs氏に同意したという。最初の名刺のデザインは、カーニングがおかしかった。
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