KDDI総合研究所は10月12日、ウェアラブル端末などに搭載されている加速度センサの最大値・最小値の個体差を利用し、複製が困難な端末固有のIDを生成するソフトウェア技術を、世界で初めて開発したと発表した。
加速度センサの最大値・最小値から抽出した特徴量に対し、誤り訂正技術や暗号技術による処理を施し、端末固有のIDを生成する。また、誤り訂正処理を最適化することで、高い一意性と頑健性を両立したという。
同技術を利用すれば、加速度センサを持つ端末にソフトウェアをインストールするだけで、1000兆分の1以上の精度を持つ端末固有のIDを生成できるようになるとのこと。また、同一の端末でID生成を1万回繰り返し、同一の端末識別IDが生成されること、高温(90℃)、低温(-18℃)、低気圧(高度2000m)の環境下においても同一の端末識別IDが生成されることを確認しているそうだ。
約10キロバイトのライブラリにより、端末識別IDを約50ミリ秒で生成可能。高速・軽量な処理のみで端末識別IDを生成でき、処理能力の制約が大きいIoT端末でも利用できるという。また、必要に応じてメモリ上で端末識別IDを生成し、鍵として利用できるため、ストレージに鍵を残さない仕組みを実現。メモリ保護技術によりメモリ上のデータを保護することで高い安全性も確保できるという。
同社によると近年、ウェアラブル端末などインターネットに繋がる端末(IoT端末)の普及が進み、認証や決済に利用されることが増えている。しかし、安全な利用のためには、端末の識別が必要であり、携帯電話やスマートフォンにおいては、SIMカードやセキュリティチップなどのハードウェアを活用して識別することが一般的だった。
IoT端末には、これらのハードウェアが搭載されていないものも多く、専用の回路やメモリを用いて端末を識別する方式が検討されてきた。しかし、前者はコストや物理的大きさの制約により、後者は専用のドライバの導入負荷により、ウェアラブル端末など小型端末への搭載は困難だった。しかし、同技術を利用すれば、端末の識別をソフトウェアのみで高速・軽量に実現できるという。
汎用OSを搭載するIoT端末においては、自由にアプリをインストールして、端末に新しい機能を追加可能。このため、自宅や自動車の鍵、PCログインのためのトークン、入館カードなどを、ウェアラブル端末に集約するといったことが可能になる。たとえば、来客向けの入館カードを電子化し、有効期間をソフトウェアで管理することで、貸し出し・返却の手続が不用になるという。
今後は同技術の実用化に向け、そのほかのセンサやデバイスも活用した汎用的な方式を実現するとともに、端末識別IDの生成処理のさらなる効率化、安全性の向上を図るという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」