乾電池で空を飛ぶ--パナソニック「エボルタ」と東海大学が有人飛行にチャレンジ

 パナソニックは、新たな乾電池「エボルタ」の長持ち・パワー実証実験として、「世界最長距離 有人飛行チャレンジ」に挑むと発表した。


ギネスに挑戦する東海大学が製作した機体

搭載される乾電池エボルタ

 パナソニックは、2008年にグランドキャニオンの断崖絶壁を6時間46分31秒かけて、530.4m登頂した「グランドキャニオンに挑戦」をはじめ、「24時間耐久走行に挑戦」や「東海道五十三次に挑戦」、「トライアスロンに挑戦」など、乾電池エボルタの長時間駆動やパワーを実証するための挑戦を続けてきた。

 なかでも、プラレールを使用した2013年の「世界最長レール走破チャレンジ」、実際の車両を走らせた2015年の「世界最長距離鉄道走行チャレンジ」はギネス世界記録に認定されている。

 2016年は、東海大学ライトパワープロジェクト人力飛行機チームとタッグを組み、有人飛行で「一次電池で固定翼航空機が飛んだ世界最長距離」に挑戦し、ギネス世界記録の取得を目指すという。


東海大学のチーム

 これまで乾電池による有人飛行の記録はないが、記録達成の最低条件として、製作した機体が10km以上飛行することが必要になるという。


パナソニック アプライアンス社コンシューマーマーケティングジャパン本部・黒木友揮氏

 チャレンジ本番は、2016年11月3日に、滋賀県彦根市の琵琶湖彦根港で開催されるが、それに先立ち9月26日、神奈川県平塚市の東海大学湘南キャンパスで実施した説明会では、パナソニック アプライアンス社コンシューマーマーケティングジャパン本部の黒木友揮氏が、「エボルタは2008年の発売以来、世界一長持ちする乾電池としてギネス登録されている。2016年はエボルタの限界に挑む挑戦となる」と話した。

 機体は、学部を超えて参加した東海大学51人の学生が設計と製作をし、翼班、フレーム班、プロペラ班、カウル班、電装班、駆動班の6つの班に分かれてパーツごとに製作を担当。炭素繊維強化プラスチックや発泡スチロール、木材を使用し、機体重量は約77kg。人を乗せた全備重量は約130kg。高さ335cm×幅2620cm×長さ710cmとなっている。単3乾電池は約500本を使用予定だ。

 東海大学チャレンジセンター ライトパワープロジェクト 人力飛行機チーム TUMPA チームリーダー・翼班の東海林聡史氏(東海大学動力機械工学科3年)は、「東海大学チャレンジセンターでは、ライトパワープロジェクトとして、ソーラーカーと人力飛行機の2つに取り組んでいる。いずれも学生自らが設計、製作し、それぞれの大会に参加して、優勝を目指している。今回の有人飛行チャレンジは、モノづくりが好きな学生たちが集まって取り組んでいる。プロペラの断面をミリ単位で削って改良を加えることも行った。これだけ大きなことにチャレンジできる機会を得たことに感謝したい。やるからには努力したい」とした。


東海大学チャレンジセンター ライトパワープロジェクト 人力飛行機チーム TUMPA チームリーダー・翼班の東海林聡史氏(左)と、設計者・フレーム班班長の鷹栖啓将氏

 また、パイロットを務める東海大学チャレンジセンター ライトパワープロジェクト人力飛行機チーム TUMPA 設計者・フレーム班班長の鷹栖啓将氏(東海大学 航空宇宙学科航空宇宙学専攻3年)は、「東海大学チャレンジセンターでは、40年以上に渡り、低翼機の研究を進めてきたが、これまでは人力飛行に最適化した設計にしてきた。今回は、乾電池を動力にするために、翼の大きさを1.5倍にするなど、新たに設計した。低翼機は操縦性の高さが特徴である。乾電池は10kg以内で収めており、これはエボルタだからこそ実現できたもの。本番での飛行速度は、時速36kmを予定している。パイロットは、寝そべった体勢になるので計器類の役割も重要になる。電力で飛ぶという新たな挑戦であり、困難もあると思うが全力を尽くしたい」と述べた。

 今回のギネス記録認定ルールは、最低でも10km以上の飛行を条件とし、離陸および飛行の動力は市販の乾電池であること、飛行中の乾電池の交換や部品の取り外しはできないこと、離陸ポイントから着水ポイントに至るまでの飛行経路の総距離が記録となること、飛行距離はGPSで算出することが定められている。

  • 機体の概要

  • 琵琶湖の飛行ルート

  • ギネス認定のルール

 パナソニックの黒木氏は、「琵琶湖で最も風が少なくなる午前6時30分の飛行を予定している。10kmを飛行することで、記録は達成するが、その後も飛行を続けたいと考えている。琵琶湖大橋付近に向けて、琵琶湖を横断する形で飛行する形になる。うまく行けば午前8時ぐらいの着水になる」とした。

 エボルタは、2008年の発売以降、世界約80カ国で発売されているロングセラー乾電池。単1~単4形までをラインアップ。長持ち性能とパワーがともに高く、大電流域から小電流域まで、幅広い機器で使用できるのが特徴だ。2016年8月末には、累計生産個数が20億本を突破したという。

 「エボルタは従来の乾電池をすべて見直し、容量を大きくし、より多くの材料を入れられる『構造』、独自の材料で反応性が高い『材料』、独自の生産ラインで高密度に材料を充填する『工法』の3つの技法で、長持ちとハイパワーを実現している」などとした。

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