パナソニックは、山形大学工学部電気電子工学科教授の東山禎夫氏と共同で、OHラジカル生成量を従来比10倍とした高機能帯電微粒子水「ナノイーX」デバイスを開発。その仕組みや効果などについて説明した。
パナソニック アプライアンス社技術本部ホームアプライアンス開発センター所長の本橋良氏は「近年は花粉、PM2.5の飛散量増加やアレルゲンの浮遊など、空気環境にまつわる社会的な不安が増大しているが、ナノイーXにより、屋内空間における空気の浄化効果や、脱臭効果をさらに向上させられる」という。
OHラジカル生成量を従来比10倍としたことで、10を意味する「X」を名称に使った。
スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなど、日本全国の主な花粉11種に対して、ナノイーXを曝露し、電気泳動法で分解効果を検証したところ、無力化することを確認。1年を通じて日本全国の主な花粉を無力化できるほか、ダニや昆虫に由来する新たなアレル物質を抑制することを検証。室内のカーテンやカーペット、衣類などに付着しているタバコ臭、汗臭、生乾き臭、ペット臭に加えて、新たな焼肉臭にも対応することで、生活5大臭を分解、脱臭できるという。たばこ臭の脱臭では、従来120分かかっていたものが12分で消臭できたという。
パナソニックでは、1997年に室内の空気浄化をテーマに研究をスタート。2001年から「ナノイー」の技術開発を開始した。2003年には、水に高電圧を加えることで生成されるナノサイズの帯電微粒子水であるナノイーデバイスの開発に成功。空気清浄機「エアーリフレnanoe」に搭載して実用化。その後、空気環境の改善を目的に、エアコンや空気清浄機などの家電製品に搭載してきた。さらに、自動車や鉄道などの移動空間や病院、ホテルなどの公共施設にもナノイーデバイスを供給してきた経緯がある。
JR東日本の山手線新型車両やJR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」などにも採用。クルマには、国内外の自動車メーカー8社65車種に搭載。トヨタ自動車では30車種にまで搭載車を拡大しているという。
本橋所長は、「2015年度には年間580万台のナノイーデバイスを販売。累計3000万台を達成した。2018年度には、年間1000万台、累計販売5000万台を目指す。今後もナノイーデバイスをさまざまな機器に搭載していく」という。
今回、開発したナノイーXデバイスは、ナノイーXの生成部である対極板の形状を、同心円ドーム形状から4本針形状に変更。放電方式を「コロナ放電」から、より集中的に放電できる「マルチリーダ放電」に進化させ、電子密度の高いOHラジカル生成領域を拡大。ナノイーの特徴である弱酸性、長寿命はそのままに、浄化効果や脱臭効果を向上させるOHラジカル生成量を従来比10倍に増やした。
検証は、約6畳の試験空間で実施。ラジカル発生量は、ナノイーでは毎秒4800億個であったのに対して、ナノイーXは、毎秒4兆8000億個になったという。
ナノイーXは、霧化電極を電子部品「ペルチェ素子」で冷却し、空気中の水分を結露させて水を作り、霧化電極と向きあう対極板の間に高電圧を印加することで、OHラジカルを含んだ約5~20ナノメートルの大きさのナノイーXが発生する。
麻布大学獣学部微生物第一研究室教授の阪口雅弘氏は、「主要な環境アレルゲンとして、室内はダニ、室外はスギ花粉があげられる。子どもの喘息は、10年で2倍に増加したという調査結果もあり、小児喘息の90%がダニを原因としている。室内塵1グラムあたりに、2マイクログラム以上のダニアレルゲンがあると、喘息にかかりやすい。一方で、日本では国民の10%がスギ花粉症にかかっており、年間医療費は3000億円に達している」と状況を説明する。
「ナノイーXでは、39項目のアレルギーをまとめて調べられる『View39』に選定されているアレルギー性疾患の主要な要因である吸入系アレルゲンのすべてを分解することを確認した。これは吸入系の代表的なアレル物質である花粉、ダニ、ペット、昆虫、真菌を網羅しているものである。View39で指定されている39種類のうち、空質改善に影響する17種類の吸入性系アレルゲンにおいて、十分な分解効果が認められたナノイーXは、さまざまなアレルギー症状緩和に有効なデバイスであるといえる」と述べた。
検証では、17種類のアレルゲンを対象に、6畳空間において、床面から1.2メートル、ナノイーデバイスから1.5メートルの位置に試料を滴下したシャーレを設置。ナノイーXを24時間曝露。電気泳動法により分解効果を検証。バンド消失を確認したという。
パナソニック アプライアンス社技術本部ホームアプライアンス開発センター課長の有村直氏は、「今後は、さらなる生活向上を目指し、新たなアレルゲンはもちろん、さまざまな空気リスクの改善を提案していく」とした。
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