8月2日に発表されたKDDIの決算は、営業収益が前年同期比8%増の1兆1305億円、営業利益が19.1%増の2751億円。こちらも引き続き、好調な決算となっている。
好業績の要因の1つは、タブレットなどマルチデバイスの利用拡大によって、auの通信ARPAが拡大していることにある。1人あたりのモバイルデバイス数は、今期で1.42まで拡大しており、複数デバイスを販売し、アカウントあたりの売上げを拡大するauの戦略が順当に進んでいることが分かる。そしてもう1つ、ドコモと同様に総務省ガイドラインを受けての販売手数料の減少も、大きく影響しているようだ。割引きができなくなったことが利益を押し上げ、好業績を記録する要因となっている。
総務省の影響による“奪い合い競争”の終焉など、市場動向の変化を受け、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、決算発表でも長期利用者優遇プログラム「au STAR」や、ライフデザイン戦略の説明に多くの時間を割いていた。ポイント還元プラットフォームとビッグデータ、決済プラットフォームという3つのイネーブラーによって、かねてよりうたっている「au経済圏」の拡大を進めることで、業績拡大につなげる方針のようだ。
そのためには、au IDの基盤を強固にする必要があるのだが、田中氏は「販売奨励金の減少でMNO同士の流動はほとんどないが、MVNOやワイモバイルなどに対する流出が見られる」と話している。低価格を求めるユーザーが、他社の回線をベースとした安価なサービスへと流出する傾向が進んでいることに、危機感を募らせているようだ。中でもワイモバイルは「大きな流出先」と田中氏は話し、危機感を露わにしている。
そうしたこともあってかKDDIは決算発表会で、UQコミュニケーションズが主体となって以降、初めて「UQ mobile」の戦略についても言及。顧客のタッチポイントを増やすことや、ぴったりプランを1年間1980円で提供する施策、そしてiPhone 5sの販売など、ここ最近のUQ mobileに関する施策を改めて説明した。
「我々のビジネスは、顧客1人あたりの売上げと数をかけた値が経営に直結する」と田中氏は話す。そのID、つまり顧客が低価格を求めて他社へ移ることで減少しているため、まずはUQ mobileのビジネスに協力して販売を強化することで、流出を防ぎたい考えのようだ。「(他社の)いいところはキャッチアップしないといけない。その次にプラスαの戦略を描いていく」と田中氏は話しており、低価格戦略での出遅れをいち早く取り戻すことが、KDDIにとって非常に重要な課題になっているといえそうだ。
なお、KDDIの決算は、公正取引委員会が大手キャリアの商習慣見直しを求める「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書を出した後に開催されたことから、この点に関する質問も相次いだ。田中氏は、報告書が公開されたばかりであり、詳細を確認していないとしたものの、囲み取材では「昨年のタスクフォースの内容でカバーされたのではないか。何か具体的に指摘を受けるわけではないと思っている」と答えた。総務省のガイドラインへの対応で、改善が進められたと解釈しているようだ。
ちなみに、決算発表の少し前から人気となっているゲーム「Pokemon GO」に関しては、KDDIとドコモの決算で言及する場面が見られた。その内容はいずれも「配信開始時のダウンロードでトラフィックが増えたが、その後は安定している」「モバイルバッテリの販売や、機種変更が進んでいる」といったもので、各キャリアにもたらした効果はおおむね共通しているといえそうだ。
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