今期から加藤薫氏から吉澤和弘氏へと、代表取締役社長が変わったNTTドコモ。7月29日に発表された同社の決算は、営業収益が前年同期比3%増の1兆1087億円、営業利益が27%増の2992億円で、引き続き増収増益の好調な決算となった。
好調の背景にあるのは、通信事業の回復とスマートライフ領域の拡大であり、ここ最近の傾向と大きく変わらない。通信事業もすでに新料金プランの影響は大幅に減少しており、番号ポータビリティに関しても、吉澤氏は「今年はプラスになっている」と話す。またスマートライフ事業も、「dマーケット」や「あんしんパック」、さらに「dカード」の利用拡大などで、順調な伸びを見せている。
他にも、ドコモの売り上げ拡大に寄与している要素はある。それは固定ブロードバンドサービスの「ドコモ光」。契約数が207万と、前年同期比と比べ5倍に拡大しているほか、「ドコモ光電話」などのオプション契約も好調に伸びているとのこと。ARPU(1契約あたりの月間売上高)もモバイル自体では停滞しているが、ドコモ光が伸びていることで全体のARPUを押し上げている。
また利益の拡大で影響を与えているのが、代理店手数料などを含む販売関連費用で214億円も減少している。これには競争が激しくなり、販売奨励金が増加傾向にある春商戦の直後ということもあるだろうが、やはり4月に総務省がガイドラインを打ち出し、端末の実質0円販売が事実上禁止されたため、割引できなくなった分の奨励金の減少がより大きく影響しているといえる。
いくつかの要因に支えられて伸びが継続しているドコモだが、懸念となる要素もいくつかある。1つは好調に推移しているドコモ光だ。現在はフレッツ光の利用者がドコモ光へ転用を進めることで伸びているが、転用による拡大には限界がある。今後は新規契約自体を増やす必要があり、光回線を引いていないユーザーに対し、どのような働きかけをしていくかが大きく問われてくるだろう。
ガイドラインの影響による端末の高額化や、より安価な通信サービスへのユーザー流出も、同社の成長を見る上では懸念されるところだ。安価なサービスを提供するMVNOの多くは、ドコモの回線を使用していることから協力関係にあるといえるが、最近ではソフトバンクが展開するワイモバイルが、フィーチャーフォンと料金が近いこともあり、他社のフィーチャーフォンユーザーを奪っているという話も聞かれる。
この点について吉澤氏は、そうしたユーザーが増えていることを認めた上で、「完全にキャッチアップはできないが、『シェアパック5』で対抗できる。(他社に)移行する人をゼロにすることはできないが、顧客をしっかり囲い込んでいく」と、既存の枠組みで対応していくと話す。さらにフィーチャーフォンユーザーに関しては、秋にLTE対応のAndroidフィーチャーフォンを発表する際、使いやすい料金プランを提示することで、継続利用につなげたい考えも示している。
もっとも今回の決算は社長交代した直後の発表であり、現在の業績も、あくまで“加藤体制”の延長線上にあるものだ。吉澤氏の新体制による戦略が明確になってくるのは、もう少し先になるだろう。ドコモがどのような変化を遂げるのかが注目されるところだ。
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