理論的には、出資額に応じて、一部のポケストップでより多くのポケモン、またはよりレアなポケモンを引き寄せられるようにすることも可能だ。ルアーの範囲も、事業者とNianticの交渉内容や戦略上の要望によって、調整可能になるかもしれない。
これは、McDonald'sのようなファーストフードチェーンなど特定分野の事業者の方が、ほかの事業者よりもこのゲームを支配するのに有利な立場にいることを意味する。なぜなら、広告に多額の資金を投じることができるからだ。
現在、検索エンジン最適化(SEO)やドメイン名のサイバースクワッティングがウェブ上のビジネスの成功を決定づける大きな要因になっているのと同様、こうした類いの力関係は、ARや地理的に拡張されたアプリの世界での成功に多大な影響を及ぼすだろう。
もちろん、懸念すべき点もいくつかある。われわれは、McDonald'sのようなある種の事業者が、子供のような無防備なユーザー層に過度に影響を及ぼすことを認めるべきなのだろうか。
保護者はこの種のゲームを制限できるようになるのだろうか。あるいは、クラウドサービスプロバイダーのレベルにおいて、ARや地理的なオーバーレイをある程度細かく無効化できるようになるのだろうか。
例えば、筆者がPokemon GOのデータプロバイダーであるGoogle Mapsにログインして、自分の所有する端末で、あらゆる業種の事業者が近所のルアーやポケモンを表示するのをブラックリストでブロックできてしかるべきだ。
筆者は自分の子供がMcDonald'sでうろつくことを望まないかもしれない。近くのピザレストランやアイスクリーム店、質屋、タバコ販売店についても同じだ。
アダルトビデオストアや銃販売店、あるいは教会や礼拝所、公共の公園も同様である。筆者が何を言いたいのかは、お分かりいただけるはずだ。
位置情報ベースの広告とARに伴う倫理上の問題に加えて、事業者がこのゲームを利用して、大勢の人々を一定の地域に引き寄せることをわれわれは本当に望んでいるのか、という問題もある。この点に関して、私人やホームオーナーズアソシエーション(HOA:米国における自治会のような組織)に権利はあるのだろうか。
ここから、どのような「仮想上の土地収用」問題が生じるのだろうか。筆者の住む南フロリダでは、HOAのある地域やゲーテッドコミュニティー(塀で囲んでゲートを設け、住民以外の出入りを制限している住宅地)は概ね商業区域から離れた場所にあり、ポケモンと関わらないようにするのはかなり容易だろう。
しかし、都市圏でこれを実行するのは、もっと難しいはずだ。店舗スペースに近い、または店舗スペースを含むアパートのような集合住宅に住んでいる場合は、特にそうだろう。
このことが現実世界で事業者や住民、エンドユーザーに及ぼす影響という問題に加えて、地理的なAPIとARオーバーレイ自体を操作するのに最も有利な位置にいるのは誰か、という問題もある。
NianticはGoogleからスピンオフした企業であるため、Google MapsのAPIが機能する仕組みに対して独自の知見を有しているのは、意外なことではないはずだ。そのことは、Nianticが位置情報データ分野の陰の実力者になったことを意味するのだろうか。同社は実のところ、ほかの開発者が使用できるプラットフォームを手に入れたのだろうか。ほかの開発者は、NianticがPokemon GOで使用するメタデータを同様に使うことができるのだろうか。
これらの疑問に対する答えが明らかになるのが楽しみだ。Pokemon GO自体が一時的な流行なのか、それとも次の大ブームなのかは重要ではない。このテクノロジが今後、実店舗によるビジネスに及ぼす影響は重大なものになるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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