先週、ショッキングな現実がニュースフィードに流れた。
米国時間7月6日、停車を命じたミネソタ州の警官に撃たれて致命傷を負ったPhilando Castileさんの映像が、膨大な数のユーザーの「Facebook Live」上に10分間にわたって配信された。Castileさんの恋人Diamond Reynoldsさんが、発砲直後の様子をライブストリーミングし、視聴者は、血に染まってシートに倒れ込んだCastileさんの姿を見ることになった。Castileさんの呼吸が弱くなってゆくのが映っていた。Reynoldsさんの4歳の娘も発砲の現場を目撃しており、泣き叫び始めた母親を慰めようとする娘の声も聞こえてくる。
Facebook Liveは、翌7日のダラスでも悲惨な場面をとらえている。警官の暴力に抗議する平和的なデモのさなか、スナイパーが警官を銃撃し、警官がうずくまる様子を、Michael Kevin Bautistaさんがライブ動画でストリーミングした。
Castileさんの映像もダラスの動画も、最初は編集なし、検閲なしの状態で流れていた。Castileさんの動画はFacebookから一時的に削除され、同社はその理由を「技術的な障害」と説明したが、のちにショッキングな内容に関する警告が付いて復活した。Bautistaさんの動画は、約10時間で300万回以上も再生され、その後、同じ警告が追加された。このような警告が付くと、動画は自動再生されなくなり、ユーザー自身が視聴するという選択をしなければならなくなる。
Facebookが11億のユーザーに配信するニュース(ReynoldsさんやBautistaさんのようなユーザーによる投稿も多い)が増え続けるなか、今回の配信に対するFacebookの処置には同社のジレンマがはっきりと表れている。Facebookはニュースフィードのライブ動画に優先順位を付けているが、従来型の報道機関と違って、編集の透明性を明らかにする必要はない。
Reynoldsさんの動画がいったん削除されてから再公開された真の理由がどうあれ、「それが編集上の選択だった」と語るのは、コロンビア大学ジャーナリズム大学院の教授であり、Tow Center for Digital Journalismの創設ディレクターでもあるEmily Bell氏だ。「処理が自動だったか手動だったかは問題ではない」(Bell氏)
「この責任は、Facebookが望んで応じるかどうかにかかわらず、同社に委ねられるはずだった」(Bell氏)
Pew Research Centerが2016年に実施した調査によると、米国の成人のほぼ半数がFacebookでニュースを見ているという。2013年には米国の全ユーザーの47%がFacebookでニュースを見ると答えたが、2016年は66%だった。
それほど影響力が強まっているにもかかわらず、人々は「表示されるニュースを決めているのがアルゴリズムによる順序づけなのか、人的なシステムによるものなのかについて、ひどく混乱している」とBell氏は述べる。
その混乱が、5月には論争に発展した。報道によると、Facebookでも影響力の大きい「Trending Topics」セクションに関わる従業員は、保守的な記事に対して偏見を抱くよう指導されていたという。この報道で、記事のリストは純粋にデータに基づいて順位が決定されるという仮定は崩れ去った。Trending Topicsに関するFacebookの方針が不透明なために(たとえば秘密保持契約のもとで従業員を抑えこんでいる)、同社は何かを隠しているという疑いも持たれた。
南カリフォルニア大学アネンバーグジャーナリズムスクールの教授で、同校のソーシャルメディアプログラムのディレクターも務めているKaren North氏は、次のように語っている。「Facebookが本当にニュースを増やし始めるつもりなら、編集上の役割をさらに担うかどうかという問題に直面することになる」
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス