経営環境の大幅な変化が伝えられるシャープだが、本業ともいうべき製品開発については動きが活発だ。
シャープが特に力を入れて展開しているのが、家電などに人工知能(AI)を搭載することでユーザーの利便性と愛着を高める「ココロプロジェクト」。このほど、その最新商品となるウォーターオーブン「ヘルシオ」(AX-XW300)が発表された。計5機種を発売予定で、XW300の市場想定価格は18万円前後。発売日は9月8日を予定している。
今回のヘルシオは、ただ友達のようにおしゃべりしたり、操作をアシストしたりしてくれるだけではない。クラウドサービス「COCORO KITCHEN」と連携し、季節や天気、それまでの調理履歴などをAIが考慮した上で、クラウドにある豊富なメニューの中から最適なものを選び出すという優れモノだ。
「従来の家電は多機能化を中心に進んできたが、今回の『ヘルシオ』(AX-XW300)はユーザーの生活スタイルにあわせて進化する。便利な家電で終わらせるのではなく、知性を持ち、愛着を持っていただける家電としてお客様に寄り添うイメージ」(取締役常務執行役員健康・環境システム事業本部長 沖津雅浩氏)。
行動を学習して操作が快適に成長していく知性を持ちつつ、感情豊かな音声対話でユーザーと日々コミュニケーションをとって愛着を深めてもらう。シャープが提唱する「ココロプロジェクト」を体現する製品に仕上げてきた印象だ。
2004年の発売以来、健康志向をひとつのテーマに掲げてきたヘルシオだが、今回、新製品のポイントとなるのは「ユーザーの悩みを解消すること」だ。
「発売から12年。ひとまわりが経過したところで、お客様が決めたメニューを実行する道具から、お料理のパートナーへと進化する」(健康・環境システム事業本部スモールアプライアンス事業部商品企画課長 田村友樹氏)との言葉どおり、AIとクラウドを駆使して、日常の献立決めからアシストしていこうというのが大きなコンセプトだ。
シャープの示したデータによれば、主婦を対象とした「料理をするときの悩み」で最も多いのが「献立を考えること」(38.8%)で、続く「レパートリーが少ない」(30.3%)をあわせると、7割近くが似たような悩みを抱えていることになる。
一方、夕食の献立を考える際に参考とするものについては「インターネットのお料理サイト、アプリ」が50%以上を占めるなど、料理にインターネットを活用するケースはかなり多くなっているようだ。こうした主婦の悩みと現状の解消方法を採り入れて開発されたのが、AI搭載クラウド連携型のヘルシオというわけだ。
新たなクラウドサービスCOCORO KITCHENを立ち上げることで、シャープが能動的に販売後の製品を成長させていく点もポイントだ。現状、初期設定で本体が対応するメニュー数は450種類ほどだが、発売前までに1000種類、そして発売後にも増加させていく方針なのだという。従来は売り切り、経年とともに機能面が陳腐化するのが普通だった家電の世界において、大きな変革と言える。
クラウドとの連携により、その日の気温や旬の食材、また家庭ごとの事情を考慮した提案に対応することも可能だ。「300kcal以下のメニューを」と注文すればそれに応じた提案がなされるほか、疾病別のメニュー提案などかなり細かな条件も対話で設定できる。
材料や味付けはスマホ・タブレット端末の専用アプリに自動配信されるため、詳しい情報は手元で確認することも可能。また外出先で専用アプリを用いて献立を決めると、その調理データを家庭内のヘルシオが自動で取得しておいてくれるなどの連携も可能だ。
その他、学習という面では、地方ごとの呼び方を随時学習していくこともできる。例えば「かしわを使った料理を」と相談した場合、最初は「ごめんなさい、『かしわ』って知らなかったよ」と返されてしまうが、それが鶏肉であることを教えてあげれば「覚えておくよ」と学習し、次回からは通じるようになるとしている。
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