おしゃべりするシャープのお掃除ロボ「ココロボ」にはじまったシャープの「ともだち家電」シリーズが、クラウド接続をともなうコミュニケーション能力の強化によって、一気に近未来ステージへと突入した。
10月末に発売されたプラズマクラスター冷蔵庫(SJ-TF50B)は「おしゃべりする冷蔵庫」。買い物した食品などを収める際、「ヨーグルトを買ってきたよ」「ハムを買ってきたよ」と話しかけておくと、数日後には「ヨーグルトは明日が(賞味)期限だよ」と教えてくれる。
同時期に発売されたウォーターオーブン「ヘルシオ」は、音声対話によるメニュー提案機能付き。「鶏肉を使った料理を教えて」と話しかければ「チキンステーキはどう?」と提案し、自動で調理の準備を始めてくれるといった具合だ。
もちろん、ココロボやスマホ向けアプリ「エモパー」と同様、ユーザーを和ませるとりとめのないおしゃべり機能も搭載。愛玩動物的なポジションは引き続き確保しつつ、積極的にお手伝いをすることで、家族の一員としてのポジションをより高めている。
さて、一見すると白物ならぬイロモノ家電のように思われがちな新製品だが、搭載されている機能・技術とシャープの狙いはそれなりに深いものがある。
まず、白物家電につきまといがちな機能の陳腐化を極力おさえる効果があること。冷蔵庫の食品情報、レンジのレシピ情報などはクラウドによって管理されており、少なくとも情報面では常に最新の状況を保持することができる。利用を重ねて情報を蓄積することで、家電側が学習できる点も特長だ。ヘルシオのメニュー提案において顕著だが、その家庭で好まれる料理を理解してくれば、提案するメニューもそれに応じた内容に定まってくる。
こうした成長の要素は、一般的に10年単位で使うことが前提で、かつ次々と新機能が開発されて相対的に陳腐化するイメージが強い白物家電の弱点を補うことができる。販売してしまえば終わりではなく、販売した後にも長く愛着を持ってほしいというシャープの願いが込められている。
技術面の鍵を握るのは音声対話だ。冷蔵庫への情報登録にせよレンジのメニュー提案にせよ、文字入力や複数のボタン操作によっても実現することは可能。そこにあえて音声対話を持ってきたことで、ユーザーインターフェースの向上と家電への愛着増大という狙いを同時に実現できている。
「家電が知るべき『正解』を引き出す最適な手段として音声対話を位置づけています」(コンシューマエレクトロニクスカンパニー クラウドサービス推進センターイノベーション企画部参事・安田一則氏)。つまり、「登録・入力」といった作業感の漂うワードを「話しかける」という柔らかな行動に置き換えたことで、より正確かつ安定した情報の取り込みを狙っているというわけだ。
シャープの音声認識および自然な音声合成、また取得した情報を生かすための人工知能や必要情報を受け取るセンシング技術は極めて高いレベルにある。ココロボやエモパー開発などを通じて蓄積してきたノウハウと技術の裏付けが、今回の新製品における音声コミュニケーションにおいてもいかんなく発揮されたといえるだろう。
クラウドへとつながった冷蔵庫とオーブンレンジは、ここ10年ほど家電業界のテーマに上がることの多かったホームネットワークの世界にも一石を投じる存在となりそうだ。
10月の「CEATEC JAPAN」のシャープブースで実際に展示された事例を紹介すると、オーブンレンジに「冷蔵庫にある消費期限が近い食材を使った料理を教えて」と話かけることで、冷蔵庫の登録情報をレンジが引き出した上で最適なメニューを提案してくれる。この展示は思いのほか好評だったそうで、実装に向けた準備が急ピッチで進められているそうだ。
どちらかというとテレビ、録画機などのAV機器周辺に限定されがちだったホームネットワークの概念が、白物家電の世界へと本格的に持ち出されたのは面白い。家電メーカーの立場からすれば、これまで更新時期や価格の関係から難しいとみられていた「白物家電製品の囲い込み」にもつながる話だ。
人と家電だけではなく、家電同士も「おともだち」としてつながる世界。その近未来的な雰囲気は、一ユーザとしても心躍るものがある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス