6月27日、デジタルハリウッド大学大学院駿河台キャンパスにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(三十六)」と題したトークセッションが行われた。コラムニストの黒川文雄氏が主宰、エンターテインメントの原点を見つめなおし、ポジティブに未来を考える会となっている。
今回は「CG・AI・SNS 多様化する時代の アニメ・ゲームコンテンツの創り方」と題し、登壇者それぞれの視点からアニメーションを取り巻く環境や展望などが語られた。登壇したのは情報サイト「アニメ!アニメ!」や「アニメ!アニメ!ビズ」編集長を務めたジャーナリストの数土直志氏、ウルトラスーパーピクチャーズに所属するアニメーションプロデューサーの平澤直氏、大手ゲームメーカーでゲームAIの開発に従事している三宅陽一郎氏。
冒頭では数土氏から、フランスのアヌシーで開催している「アヌシー国際アニメーション映画祭」の紹介を通じて、日本のアニメーションにおける海外からの見方や扱いについて語られた。
アヌシー国際アニメーション映画祭は、数あるアニメ専門の国際映画祭としては最大規模のイベントと説明。特にここ数年では、欧州の優秀な人材を確保したいと、ディズニーをはじめとした米国の大手企業が乗りだしているという。
このような大きな映画祭において、日本からの積極的なエントリーは少ないという。もっとも、東映アニメーションやNHKなどのような老舗の会社はすでに人脈を持っているためブースを構える必要がなく、ミーティングを目的に参加自体はしていると語る。
その一方で、コンペに対しての出品は多いという。ここで賞を受賞することは世界市場における大きな宣伝となるためだ。過去、細田守監督の「時をかける少女」や原恵一監督の「カラフル」などが受賞している。
とかく日本のアニメやコミックなどのコンテンツを好む熱心な海外ファンが存在し、実際に日本文化の展示会である「ジャパンエキスポ」や、日本のアニメやコミックなどをテーマの「アニメエキスポ」でも盛況な様子が日本でも伝えられているが、世界における日本アニメやコミックの存在感は、アヌシーや「コミコン」を見るとあまりないというのが数土氏の率直な印象だという。ことコミコンではDCコミックスやマーベル・コミックといったアメコミが圧倒的な存在感を示し、数土氏の目から見て、日本のコンテンツはおおむね1割程度のシェアだという。もっとも1割でも獲得できているのはすごいこと、という見方もできると語った。
近年盛り上がりを見せているアニメ・エキスポについて、数土氏は気になるポイントを挙げた。まずは動員数の増加による巨大化。かつて十数年前に2万人の動員で大きなニュースとなったが、前回の2015年ではユニークユーザーで10万人を超えるほどで、さらなる増加が見込まれるという。
そして“ビジネスの日本化”も進んでいると説明。従来は現地のライセンサーに権利を販売し、プロモーションはライセンサーが行うものとされていた。しかしながら、現在は日本企業が自ら乗りだし、イベントの運営を行うようになってきたという。こと2016年はバンダイナムコグループや有力エンタメ企業がマイクロソフトシアターなど大型会場を貸し切ってイベント行うとしている。この背景には、ここ数年における海外からの収入が増え、無視できないレベルになってきているからと推察している。
さらにイベントのスポンサーにも時代の流れを感じるという。10年前ぐらいはいわゆるパッケージメーカーが中心となっていたが、2016年は日本のコンテンツを提供する配信サービスのcrunchyrollや動画配信サービスのhulu、スクウェア・エニックスも名を連ね、いわゆる「配信」が力を持つようになったとしている。
このようなことから、アニメを取り巻く環境は「20年に一度の変革期」にあると主張した。また世界における日本のアニメやコミックは、差別化した独自マーケットによって成り立っており、海外には熱心なファンが存在している一方で、マスのマーケットはつかめていないという見解を示した。
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