今は20年に1度の変革期、求められる海外進出と再生産性--識者が語る日本アニメの展望 - (page 2)

日本のアニメはもっと海外のネットワークに加わるべき

 続いて、海外のユーザーは日本のアニメをどのように思われているのか、という点が話題となった。数土氏は、詳しい人はヤングアダルトに向けた作品が多いという認知があるものの、多くはセクシャル要素の強いものかキッズ向けしかないというイメージが強いと語る。平澤氏もこの意見には同意し、詳しくない一般層から見て、子ども向けかと思われていた作品でいきなり仲間が死んでしまうようなシーンがショッキングに映り、怖くて見せられないという意見があった例を挙げ、海外向けには工夫や配慮が必要とも語った。

 また平澤氏は「日本で人気にならないと海外でもウケない」というイメージや意見に対して「意外とそうではない」とし、地域差があるという見解を示す。配信によるデータ分析によって地域差が見えるようになってきており、海外の配信業者からのオファーも地域によって内容が異なってきているという。特定の国や地域に向けた作品作り自体はこれまでも行われてきたが、その取り組みや意識がより鮮明になり、業界として浸透してきたと語った。

 数土氏は、海外との共同制作は失敗の連続という歴史があったことに触れつつも「ひとつの国で物を作る時代は終わりつつある」と指摘。もちろん配信による日本アニメの人気向上やそれにともなうライセンス価格の上昇など、日本企業も海外進出に意欲的な状況にはなっているが、一方で、米国Rooster Teethのクリエイターによるセルルックの3DCGアニメ「RWBY(ルビー)」を例に挙げ、日本のアニメスタイル作品が海外で制作できる状況になりつつあると話す。

 ほかにも海外につながる映像配信プラットフォームは外資系企業が主力となっているため、海外側の考えひとつで状況が変化してしまうことのリスクがあることも指摘。また平澤氏は、最近では中国が製作委員会への出資を通じて日本流のアニメ制作やビジネスのノウハウを学んでいるような状況でもあり、将来的な展望も踏まえて中国とどうのように付き合っていくかを考える段階にまできているという。数土氏はこのようなことから、業界や日本企業としてさらなる海外マーケットへの進出、そして海外のネットワークに加わっていくことの重要性を説いていた。

アニメ好きゲームAI開発者から見た“分布と役割”

 ゲーム業界ではデジタルゲームにおけるAI開発の第一人者として知られている三宅氏だが、その一方で無類のアニメファンという一面も持ち合わせており、この場ではアニメにおけるAIをおおまかに大型と小型、戦闘系と日常系の2軸で分類したマップを披露した。

 マップはここ10年の作品を中心に取り上げたものとしているが、最近は深夜アニメがファンタジー世界をテーマにしていることもあってか、電脳空間におけるAIが多くなってきているという。また、分類されたAIがどういった能力を持ち、どのように役立つかもあわせて説明していた。

アニメにおけるAIのマップ
アニメにおけるAIのマップ
分類されたAIが、どういった能力をもっているのかの分布
分類されたAIが、どういった能力をもっているのかの分布

 ちなみにAIにまつわる話題のなかで、創作活動や創作支援が現実的に可能なことなのか、という問いかけも行われた。三宅氏はこれまで人間とコンピュータは対極的な存在だったが、例えば音楽のメロディーの良さや絵画の面白さといった人間側が持つ“曖昧さ”を解釈できるようになってきた段階であり、創作の分野では人間の領域に少し足を踏み入れた状態にあるという。

 AIの学習スピードは人間よりもはるかに早いものの、「オリジナルの一次創作を現代のニーズにあわせて生み出すのはまだまだ難しい」という。もっとも、人間が作品の方向性を指示し、AIとのやりとりによって最適化を進めていくと、膨大なデータベースからその人が考える方向性に基づいた二次創作作品を生み出す可能性は少し開けてきていると語った。

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