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今は20年に1度の変革期、求められる海外進出と再生産性--識者が語る日本アニメの展望 - (page 3)

佐藤和也 (編集部)2016年07月11日 12時19分
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アニメのビジネスモデルの模索と、今の時代に求められる再生産性

 平澤氏は、今がアニメ産業における20年に1度迎える地殻変動の年であるとし、アニメビジネスの変化と、これからの展望について語った。

 今から約20年前に起きた大きな変化は「新世紀エヴァンゲリオン」とデジタルアニメによってもたらされたものと説明。アニメの作り方や作品の評価軸、視聴習慣はもとより、売り物としても玩具からビデオグラム、制作費の集め方も番組スポンサーから製作委員会へと、アニメに関するあらゆるものが変化したという。

 現在ではDVDやBlu-rayといったパッケージ販売の限界や、高品質化が進んだことによる制作費の高騰、ブランド維持のために常に全力で臨まなければいけない体制が続いていることによる疲弊、制作期間の長期化による高コスト化や続編発表の機会逸失など、さまざまな問題が抱えていると指摘する。こうした状況下でアニメスタジオでもさまざまな挑戦を試みているほか、周辺ではアニメ配信市場やアニメ関連ライブ市場、PCやスマホアプリを通じたオンラインゲーム市場の拡大など、新規市場の勃興も見られるという。

  • 「エヴァンゲリオン」がもたらしたアニメの変革

  • デジタルアニメがもたらした変革

  • ビデオグラムや製作委員会ビジネスの洗練と疲弊

 こうした状況を踏まえ、平澤氏が考えていることのひとつとして、アプリを売るためのアニメ展開に触れた。モバイルデバイスのゲームは市場の成熟により、クリエイティブ重視かつ欲望からあえて離れる作品化(IP)が求められているとし、「グランブルーファンタジー」や「チェインクロニクル」のようなオリジナルIPによるヒットタイトルが創出されており、映像化の役割も求められているのではと語る。

 平澤氏自身がスマホゲーム「モンスターストライク」のアニメ版プロデューサーを務めており、実際モンスト単体の売り上げが国内アニメBlu-rayディスク市場よりも大きいことに触れつつ、同アニメがYouTube向けに配信したところ、開始2週間で世界500万回再生を突破するなど大きな反響を得たと語る。ほかにもスマホゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」や「Fate/Grand Order」のヒットを見るに、アプリのショーケースとしてアニメを制作する手法にも活路があるのではとも語った。

  • アニメスタジオの挑戦と課題

  • 新規市場の勃興や拡大

  • アプリを売るショーケースとしてのアニメ

 これからの展望として、収益源がオンライン配信やオンラインゲーム、ライブイベントなどのオフライン興業に集約するであろうことが考えられ、終わらない企画構造や途切れない作品制作が不可欠とし、再生産性の高い企画開発や映像制作がアニメ会社としては求められるのではとの見解を示した。

 あるタイトルがヒットし続編や派生コンテンツの制作が決定したとしても、従来の制作体制ではユーザーの消費スピードに追いつかず、続編が出るころには関心が離れてしまい、別の作品に興味が移ってしまっているという。そのため、ショートスパンの新規映像や多様なジャンルのスピンオフを通じてファンをつなぎ止めるという方法が考えられる。

 それを実現するための再生産性の高め方として、作品を構成する要素のひとつにある「世界観」の一部としてとらえられがちな「ドラマ作成志向ルール」を独立要素として開発することにより、より自由度の高いスピンオフの創出を目指すという。

 たとえば、高校野球をテーマにした人気漫画やアニメは多数存在するが、これらは「野球」というゲームルールと「甲子園」という興業ルールという二つのドラマ生成ルールを活用して多彩な作品が排出されている、という見方ができる。ほかにも極めて再生産性が高いものとして挙げていたのは、「Fate」シリーズにおける「聖杯戦争」というドラマ作成志向ルール。聖杯戦争を象徴するものがあれば、内容として時代や場所、登場キャラクターも選ばずに展開でき、実際に多彩な作家の参加と多方面でのメディア展開に成功していることから、高い可能性を秘めていると説明した。

  • アニメ会社としての未来展望

  • 作品を構成すると思われている4つの要素

  • 世界観の一部と思われている「ドラマ生成志向ルール」を独立要素とすることで、再生産性を高めていく考え方

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