“3メガバンク”が見据える未来--FinTechで銀行は変わるのか

 日経FinTechによる、金融とテクノロジをテーマにしたイベント「Nikkei FinTech Conference 2016」が6月24日に開催された。

 「FinTechは銀行の姿をどう変える」と題するセッションでは、三菱UFJフィナンシャルグループ(三菱UFJFG)、三井住友フィナンシャルグループ(三井住友FG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の“3メガバンク”が、それぞれのFinTechへの取り組みや、スタートアップとの関係について語った。

セッション「FinTechは銀行の姿をどう変える」
セッション「FinTechは銀行の姿をどう変える」

ハッカソンや海外連携を進める「三菱UFJFG」

 大手銀行と聞くと、“お堅い会社”で新たなテクノロジの導入や挑戦に対して慎重なイメージを持つ人もいると思うが、実際にはどうなのだろうか。

 まず、三菱UFJFG デジタルイノベーション推進部長の柏木英一氏が、同社のFinTechに対する3つの施策を説明した。具体的には、(1)アイデアコンテストやアクセラレータプログラムの開催といった「オープンイノベーション」、(2)グループ内にデジタルイノベーション推進部、イノベーション・ラボなどを設ける「グループドリブン」、(3)海外でのアクセラレータ連携や、スタートアップ協働といった「グローバル」だ。

 たとえば、オープンAPIをテーマにしたハッカソンでは「若い人を中心に、ほぼ徹夜でゴリゴリ(コードを)書いてくれたチームもいて感動した。銀行とは全然違うアイデアが出てきたので可能性を感じた」(柏木氏)。また、アクセラレータプログラムでも機械学習やブロックチェーンなど、FinTech領域で将来性のあるスタートアップとの活動を進めているという。

三菱UFJフィナンシャルグループのFintech施策
三菱UFJフィナンシャルグループのFintech施策

 1月にあえて本社とは異なる場所に設立したイノベーション・ラボには、MUFGグループ各社から人材が集まり、銀行とは思えないカジュアルな服装や自由な発想で、イノベーションを起こそうとしているという。またグローバル展開として、サンフランシスコやシンガポールにイノベーションセンターを設けており、現地の人材と交流したり、地場ならではのトレンドなどを肌で感じていると説明した。

 イノベーションに向けては2つの方向からアプローチしているという。1つは、事業を知り尽くした社内のプロフェッショナルな人材が考える「事業視点」。そして、もう1つが素人目線の自由な発想で斬新なアイデアを生み出す「顧客視点」だ。「トップからは(内容が)カニバライズしてもいいと言われている」(柏木氏)。

FinTechとデザインシンキングを推進する「三井住友FG」

 三井住友FGでは、2015年10月にイノベーション部署を発足し、現在50人規模で活動しているという。同社のITイノベーション推進部長である中山知章氏は、主に(1)モバイルウォレットや新たな決済デバイスによる「次世代の購入体験」、(2)運用の自動化・個別化などの「AI・人工知能」、(3)API提供やIoT活用などの「エンタープライズサービス」、(4)ブロックチェーン活用やビッグデータ基盤などの「次世代金融インフラ」に注力していると説明する。

三井住友フィナンシャルグループ ITイノベーション推進部長の中山知章氏
三井住友フィナンシャルグループ ITイノベーション推進部長の中山知章氏

 また過去には、2014年11月に人工知能「IBM Watson」のコールセンター業務への活用を開始したり、2015年11月に国際的なブロックチェーンコンソーシアム「R3」へ参画したりするなど、イノベーションに向けた取り組みを進めてきた。日本で最初にモバイル決済「Square」のパートナーになったのも三井住友カードだ。直近では、5月から近畿大学とブロックチェーンに関する共同研究を始めているという。

 東京工業大学とは産学連携でデザインシンキングの取り組みを進めているそうだ。「2年ほど前に我々もデザインシンキングをやってみたが、やはり金融機関だけではちゃんとできないなと強く思った。それ以降は、いろいろなところでデザインシンキング的なフレームワークを学んでいる。我々がどれだけマインドセットできるかが鍵になる」(中山氏)。

あえてプロジェクトチーム化した「みずほFG」

 前述の2社とは異なるアプローチでFinTechを推進するのがみずほFGだ。同社のインキュベーションPT PT長である阿部展久氏は、「あえて“部署”ではなく“プロジェクトチーム”にしている」と話す。

みずほフィナンシャルグループのFintech施策
みずほフィナンシャルグループのFintech施策

 チームを担当役員が統括し、柔軟かつ迅速に意思決定する体制を作ることで、「いろいろなところ(部署)に、ある意味で乱暴に手を突っ込み、議論し、時には怒られながら、『こいつらプロジェクトチームだから仕方ないな』と言ってもらえる組織になっている。このカオスな状態をうまく使って組織をリードしたい」という狙いがあると阿部氏は明かす。

 また、プロジェクトチームとしてのKPI(重要業績評価指標)は、収益ではなく「ソーシングをどれだけできるか。その中で各事業部門に渡せるかが指標になっている」(阿部氏)と説明。さらに、ブロックチェーンといった新技術の検証・試行を数多く重ねることも重要だとした。

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