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“3メガバンク”が見据える未来--FinTechで銀行は変わるのか - (page 2)

藤井涼 (編集部)2016年07月06日 07時30分
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銀行は昔からテクノロジを使ってきた

 ところで最近になってFinTechという言葉が盛んに使われるようになったが、銀行は以前からATMやワンタイムパスワードなど、幅広い領域でテクノロジを活用してきた。近年のFinTechとの違いはどこにあると考えているのだろうか。

 この点について三菱UFJFGの柏木氏は、「1990年代からコンサル会社とともに議論していたが、ユビキタスやIoTなど当時から大体いまある概念を話していた。それから20年経って、ついにその土壌が整ったという印象」と語る。ただし、スマートフォンやクラウド、オープンAPIの登場により、FinTechサービスを開発しやすくなったことで、数多くの事業者が新規参入していることから、当時とは求められるスピード感が全く違うと危機感を見せた。

三菱UFJフィナンシャルグループ デジタルイノベーション推進部長の柏木英一氏
三菱UFJフィナンシャルグループ デジタルイノベーション推進部長の柏木英一氏

 三井住友FGの中山氏は、20年前と比べて“あり余る”ほどの新技術が生まれているが、それらの使い方を間違えてはいけないと警鐘を鳴らす。「技術やデバイスがあるから、それを使って何かできないかと考えがちだが、ユーザーニーズに立ち返らないといけない。仮説を立ててそれを実現するには、どの技術が必要なのか、なければ作るのかを考えるべき。ただし、ゆっくりやっているとスピード感が削がれるので、スタートアップを含めた他社と共存して進めたい」(中山氏)。

 みずほFGの阿部氏も、コンセプト自体は悪くなかったが、当時は技術がなかったために実現できなかったことも多いと振り返る。その中の“失敗事例”として、シャープのZAURUS(ザウルス)やPDAを通じたバンキングや、デジタル放送を活用したバンキングなどを挙げ、「当時のユーザーインターフェースだと限界があり、コンセプト先行でユーザーにとって価値がなかった。ただし、その経験がいまにつながってる」と語った。

スタートアップを「業者扱い」すると失敗する

 5月25日に可決・成立した改正銀行法では、銀行によるIT企業への出資制限が緩和された。これにより、今後はさらに金融機関とスタートアップの連携が密になることが予想されるが、3メガバンクはスタートアップとの関係をどう考えているのだろうか。

 この1年だけでも300~400社のスタートアップとコミュニケーションしているという三菱UFJFGだが、柏木氏は双方の文化の違いを痛感したという。たとえば、スタートアップの連絡ツールは、メールではなく「Slack」や「Facebook Messenger」などのチャットツールであることも多い。また、スタートアップのCEOと直接話せる機会も多いため、銀行に比べると意思決定も圧倒的に早いと説明する。

 また、銀行に限らず、大手企業がスタートアップを“下請け”のように扱うことが少なくない。この点については「反省点はグループで14万人もいるので、Fintech企業を業者扱いする人がいること。やはり対等な立場でないと絶対にうまくいかない」(柏木氏)。そこで同社では、アクセラレータプログラムなどを通じて、“ともに汗をかく”ことでFintech企業との意識を近づけているという。

みずほフィナンシャルグループ インキュベーションPT PT長の阿部展久氏
みずほフィナンシャルグループ インキュベーションPT PT長の阿部展久氏

 この意見には、みずほFGの阿部氏と、三井住友FGの中山氏も強く賛同した。「スタートアップは命をかけている。こちらがいつまでも時間をかけるとか、情報収集だけで呼ぶのは失礼。最も気にしているのは、(みずほFG側の)ファーストコンタクトをする人によって対応にバラつきが出ないかということ。1つの会社に対して間違った見方をしていないか、チーム内でディスカッションをしている。それでも銀行員には歩んできたキャリアの外に出られないみたいなところもあるため、(社内の)まったく違う2人を組ませることもある」(みずほFG・阿部氏)。

 「スタートアップとコラボする際に一番考えるのは、うちと連携することでエンドユーザーへの落ち度が絶対にあってはならないということ。スタートアップのサービスが、我々のせいでスペックを落とさないように、“Win-Win-Win”にしたい。また、スタートアップに社員を派遣するなどして、人材の育成にもぜひお力添えいただきたい」(三井住友FGの中山氏)。

 最後に3者は、顧客に選ばれ続ける銀行であるために今後も各々で切磋琢磨していきたいとコメント。ただし、Fintech市場の発展に向けて、時には銀行間で連携するといった、従来にはないアグレッシブな施策も必要になるとの認識を共有し、セッションを締めくくった。

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