日経FinTechによる、金融とテクノロジをテーマにしたイベント「Nikkei FinTech Conference 2016」が6月24日に開催された。「FinTechは世界を変えるか」と題するセッションでは、日本銀行 決済機構局長の山岡浩巳氏が登壇。FinTechの革新性を説明するとともに、日本銀行としての同氏の考えを語った。
日銀は3月に決済機構局内に「FinTechセンター」を設立するなど、自らもFinTechを推進する立場だ。近年は、家計簿や会計、資産運用、決済など、幅広い領域で数多くのFinTechサービスが生まれているが、ATMなど従来の金融テクノロジと比べて何が新しいのか。また、なぜここ数年で急速に注目されるようになったのだろうか。
山岡氏はその背景として、ブロックチェーンや分散型元帳などの新技術の登場、AIによる情報処理(ビッグデータ、高頻度取引)の高速化、スマートフォンによるアクセスのしやすさの向上、リーマンショックといった時代的要因など、いくつもの要素が影響しているのではないかと話す。
また、FinTechは新しい複数のデジタル技術を、「お金」や「帳簿・会計」「コンピュータ」など、人類の“発明”に応用したものだとする持論を展開した。「お金にデジタル技術を適用すると『デジタル通貨』になる。帳簿に適用すると『分散型元帳』、またコンピュータの発展形が『AI』だったりする。FinTechの根源は組み合わせの革新だ」(山岡氏)。
では、FinTechによって世界はどう変わるのだろうか。まず、より広範な人々が金融サービスにアクセスできるようになる。発展途上国や新興国などでは、そもそも銀行などの店舗が少ないため、移民や出稼ぎ労働者が故郷の家族に気軽に送金するといったことが難しかった。しかし近年は、スマートフォンの普及によって金融サービスへのアクセスが容易になり、モバイル決済の件数も圧倒的に増えている。
山岡氏はこうした現状を説明した上で、将来的にはFinTechが、店舗やATMが前提だった金融サービスの供給の方法を変えるかもしれないと語る。すでに銀行が提供している多くのサービスや機能がソフトウェアで代用できることから、スマートフォンやクラウドを使い、AIによる与信管理が実現すれば、「仮想空間で銀行が作れるかもしれない」(山岡氏)とした。
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