昨今、日本では「FinTech」市場が盛り上がりを見せているが、それはアジアの大国インドでも同じ。しかも、金融インフラにかかわる新興国ならではの問題を抱えているため、FinTechにかかる期待はより大きい。
インドの人口は2013年時点で12億人、GDPは2015年時点で2.2兆米ドル(約240兆円)に達した。2020年には、それぞれ14億人、3.4兆米ドル(約370兆円)にまで拡大すると予測される。
インターネットの普及にともない、Eコマース市場も急成長。2015年時点では140億米ドル(約1兆5000億円)規模だったが、2025年には約16倍の2200億米ドル(約24兆円)に拡がるとされる。モバイルの普及率は2015年10月時点で80%以上、人数にして10億人を突破した。すべてが桁違いだ。
一方、銀行口座を保有するのは人口の約半分。クレジットカードの普及率にいたっては5%以下、クレジットカードで決済可能な店舗は約3%に留まる。日本は成人1人当たり2.5枚を所有していると言われるから、いかに金融インフラが未成熟であるか分かるだろう。
クレジットカードに代わる決済手段として普及し始めているのが「モバイルウォレット」である。スマホアプリで、Eコマースでの買い物や公共料金、携帯電話利用料の支払いなどに使われる。
スマホの普及率は2016年2月時点で約20%で、それを下回るクレジットカードの普及率を踏まえると、モバイルウォレットが普及していくことに納得感がある。最近では実店舗での決済にも利用でき、市場規模は2020年までに66億米ドル(約7200億円)に達する見込みだ。
インドでユーザーを多く抱える2大モバイルウォレットが、One MobiKwik Systemsの「MobiKwik(モビクィク)」と、One97 communicationsの「Paytm(ペイティーエム)」。
MobiKwikは過去に著名な投資ファンド、セコイア・キャピタルやシスコ・インベストメントから資金を調達。2016年5月頭には日本のGMOペイメントゲートウェイからも調達し、累計の調達額は8685万ドル(約93億円)に上る。
一方のPaytmは、アリババや香港系ベンチャーキャピタルのSAIF Partners、インドの銀行などから総額8.9億ドル(約970億円)の資金を調達。その株式評価額は18億ドル(約1960億円)と推定されている。
MobiKwikとPaytmが提供するサービスは基本的に共通で、先述の携帯利用料や公共料金のほか、タクシー配車や日本のSuicaのようにメトロ、映画チケットの購入などにも利用可能。インドのテックメディア「YourStory」によれば、Paytm上では毎日7500万回もの取り引きが行われているという。
MobiKwikとPaytmはこれまでの変遷も似ている。それぞれ、2009年と2010年に創業。両社とも始めは携帯電話利用料の決済をより簡単にし、かつクーポンなどのリワードを利用者に提供するサービスを運営した。
その後、MobiKwikは「ShopClues」や「eBay」、「SnapDeal」などEコマースサイトで使える決済サービスとして拡大し、Paytmは自前のマーケットプレイスを2014年2月より開始するなどしてお互いに差別化を図ってきた。こうして今の寡占状態が作られたのである。
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