ソニーは4月28日、2016年3月期通期(2015年4月~2016年3月)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比1.3%減の8兆1057億円となったが、営業利益は同4.2倍の2942億円、税引き前利益は同7.6倍の3045億円となり、大幅な増益となった。最終黒字になったのは、2012年以来3年ぶり、エレクトロニクス5分野が最終黒字になったのは5年ぶりとしている。
モバイル・コミュニケーション(MC)分野のスマートフォン販売台数減少や、デバイス分野での下振れはあったものの、「PlayStation 4」(PS4)の販売が好調なゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の大幅な増収増益、高付加価値モデルへのシフトに成功し、増益となったイメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)などが、増益に結びついた。
大幅な伸びを示したG&NSは、売上高が前年比11.8%の1兆5519億円、営業利益が同406億円増益の887億円となった。ソニーの代表執行役副社長兼CFO吉田憲一郎氏は「PS4は、過去の世代と比べても最速の普及ペースで推移しており、現在ソニーの中でも成長を牽引する領域に位置付けている。かつ、ネットワークサービスも前年度から5割超の増収となっており、伸びは大きい」とハード、ソフトともに好調であることを強調した。
MC分野は、売上高が同20%減の1兆1275億円と減収となったが、これは数を追わない戦略をとったため。営業利益は製品ミックスの改善や費用削減により、赤字幅を同2176億円から614億円にまで縮小した。スマートフォンの販売台数については、2014年度の3910万台から2015年度は2490万台にまで絞った。
テレビ事業が258億円の営業黒字となった、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野は、売上高が同6.4%減の1兆1590億円、営業利益が610億円の減収増益。液晶テレビの販売台数は減少しているが、高付加価値モデルへのシフトや販売会社まで含めたオペレーションの改善効果が黒字に結びついたとしている。
一方、決算会見に先立ってカメラモジュール事業で596億円の減損を発表したデバイス分野は、売上高が0.9%増の9358億円、営業利益が286億円の赤字を計上した。厳しい数字を受け、吉田氏は「イメージセンサにおいても、結果的に顧客からの需要数量を読み違えたことが原因だと考えている。現在は中国のスマートフォンメーカーに拡販しており受注は順調だが、本格的な需要回復は2016年度下期の見込み」と現状を説明する。
イメージセンサは、ソニーが数年にわたって投資を続けてきた事業。しかし、2015年後半からの需要減少を受け、投資計画の見直しを発表していた。吉田氏は「イメージセンサの業績悪化については大変重く受け止めている。カメラモジュール事業についてもあるべき事業規模を再検討している」とコメントした。
ソニーでは、4月14日以降に発生した熊本地震の影響により、デジタルカメラや監視カメラ向けのイメージセンサ、ディスプレイデバイスなどを手掛けるソニーセミコンダクタマニュファクチャリング熊本テクノロジーセンター(熊本テック)での生産を停止している。
吉田氏は「ソニーグループでは3500人が熊本地方に在籍しており、一部従業員とその家族が避難所での生活を余儀なくされているが人的被害はない。熊本テックでは、低層階のクリーンルームや生産ラインに悪影響はないが、高層階のクリーンルームに地震の揺れによる損傷が生じた。今後は補強工事などを実施していく計画で、生産停止により多額の機会損失が生じる可能性がある」とし、2017年3月期の業績予想を見合わせている。
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