アドビシステムズは4月27日、クリエイター向けツール群「Creative Cloud」の2016年度事業戦略を発表した。市場拡大に向けたポイントは、(1)コアサービス=Creative Suiteからの移行と新規ユーザーの獲得、(2)新規ユーザーの獲得=写真、コンシューマー、モバイルと新たな層を開拓し、顧客としていく、(3)さらなる価値訴求=Adobe Stockなどによる新たな価値の提供――という3点。
これまで通りコンテンツを作成するためのクリエイター向けのサービスを拡充していくとともに、できあがったコンテンツの提供、コンテンツの管理、提供したコンテンツがどれくらいの価値を生んだかの測定まで、コンテンツのライフサイクル全般をフォローする体制を強化していく。モバイル対応を強化して、デスクトップとモバイルのどちらでも同じコンテンツを作成できるようにすることを目指す。クラウド活用もさらに強化して、異なるデバイスでも作業できる環境作りを進める。
「Adobeはコンテンツライフサイクルの全ての段階にも関わることができるユニークな存在感を発揮している。コンテンツの全ての領域に関われる企業は他にない。この特徴を強みに、さらに多くのお客さまにCreative Cloudを訴求していく」(米本社 Creative Cloud製品 マーケティング コミュニティー担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー Mala Sharma氏)
現在、英語のプレビュー版のみが公開されている、UXデザインツール「Adobe Experience Design CC(Adobe XD)」は、「たくさんの日本のお客さまに利用していただいているが、数週間のうちに日本語のプレビュー版を公開する予定」(Sharma氏)であることが発表された。
Creative Cloudが従来からの機能拡張に加え、コンテンツライフサイクル全般をトータルでサポートすることを目指す背景として、「一般消費者と企業の間のタッチポイントが増加し、デジタルデータは急増している。大企業といえども、デジタルトランスフォーメーションの波に乗った、動きの速い新興企業に負けてしまう可能性が出てきている」とSharma氏は説明する。
「企業は自らの価値を見直して、新しい戦略を立て直す必要に迫られている。Creative Cloudもこの変化の波に大きな影響を受け、お客さまにどんな価値を提供できるのか、お客さまのどんなお手伝いができるのかを見直した」(Sharma氏)
Creative Cloudのコアサービスについてはまず、アセットを常に共有できる環境「Creative Sync」を提供。どのデバイスからでも作業できる環境を作る。これは「将来的にはコラボレーションを実現することを想定している」ものだという。
モバイル環境も引き続き整備し、モバイルとデスクトップが同じ操作で同じことができる世界を目指していく。
ビデオについては、ハリウッドのプロフェッショナルのビデオ編集でAdobe製品が高いシェアを持っていることに続き、インディペンデント映画を対象とした映画祭であるサンダンス映画祭でのシェアを獲得。さらに「ユーチューバーのような新世代のビデオ編集用にもAdobe製品を利用してもらえるよう、フォトグラフ製品で行ったように、専門知識なしに映像の編集や作成ができるようにする」(Sharma氏)計画だ。
UXデザインをトータルで行える現在プレビュー版が提供されているAdobe XDについては、「何百ものワークロードを使いながら、パフォーマンスの心配をすることなく作業できる環境を提供する。現在でも、UXデザイナーのコミュニティーとコンタクトを取りながら日々開発作業を続けている。ここ数週間以内に提供予定の日本語版にも期待してほしい」と話した。
新たな層の顧客獲得に向けては、Creative Cloudをフォトグラフィのためにのみ利用するユーザーに向けた「Creative Cloudフォトグラフィプラン」を用意。特定層の獲得を狙う。
コンシューマー向けに新しいウェブアプリケーション「Adobe Voice」「Adobe State」「Adobe Post」を提供する。この3つは、モバイルアプリと連携したウェブアプリケーションであり、「中小企業でソーシャルメディア向けに効果的なコミュニケーションを取りたいと考えているような人もコンシューマーとともにターゲットとなると考えている。より詳細な情報は4カ月以内に提供できるだろう」(Sharma氏)
新たな価値の訴求としてはまず、コンテンツ作成者とコンテンツを必要とする人を結びつける場である、フォトストックサービスのAdobe Stockを現在以上にデスクトップアプリとの連携を強化していく。「実際にデスクトップから検索機能を使った場合、生産性が大きく高まったという声が上がっている。さらに生産性を上げるような連携を強化する」(Sharma氏)
もうひとつの価値訴求となるのが、Creative Cloudと「Document Cloud」「Marketing Cloud」という3つのクラウドサービスの連携を強め、“One Adobe”として利用者に価値訴求を進めていく。
「コンテンツの制作、コンテンツの管理、コンテンツがどれくらいの効果をもたらしたかの測定とコンテンツライフサイクル全てをカバーするサービスを提供していることをアピールしていく。クラウドサービスを提供している企業は多いが、当社のポジションは他社には真似できないもの」(Sharma氏)
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