新興IT業界のキーパーソンが集う「新経済サミット2016」が、4月7日から2日間の日程で開催された。4月8日のスペシャルセッションにはモバイルゲーム「Angry Birds」を生み出した、フィンランドRovioのPeter Vesterbacka(ペテル・ヴェスタバッカ)氏が登壇。Angry Birdsの誕生秘話とともに、現在、同氏が取り組んでいるベンチャー育成プログラム「SLUSH」を紹介した。
Angry Birdsは、鳥たちをスリングショットの弾丸として放ち、ターゲットの豚に当てるゲームアプリである。2010年に北欧で注目され、その後、クチコミでジワジワと人気を獲得。2016年時点で30億以上ダウンロードされている。
しかし、Vesterbacka氏によると、その誕生は必ずしも順風満帆ではなかったという。
Angry Birdsを生み出したRovioは2003年に誕生した。2人の大学生が、当時Vesterbacka氏が務めていたHewlett-Packard主催のゲームプログラミングコンテストに参加し、優勝したのがきっかけだ。
「彼らはコンテストに優勝したものの、次の進路を迷っており、私にアドバイスを求めてきた。だから、『ゲームを作るのもプレイするのも好きなら、ゲーム会社を興せばいい』とアドバイスした」(Vesterbacka氏)
Rovioは最初の6年間で51ゲームを作ったが、まったくヒット作に恵まれなかった。Angry Birdsは52番目のゲームだが、いきなりヒットしたわけではないという。
「リリース当時は地味な扱いで、クチコミで拡がっていった。その時期はスマートフォンの爆発的な普及と重なり、それも追い風となった。だから、私はRovioのメンバーに対し、『1億ダウンロード以上を目指せ』と発破をかけた。しかし、メンバーは、(当時大流行していた)『テトリス以外は1億ダウンロードなんて無理だ』と弱気になっていた」(Vesterbacka氏)
スタートアップで重要なのは「周囲が不可能だと言っても『自分たちはできる』と信じることだ」とVesterbacka氏はアドバイスする。
「最初から成功するベンチャー企業なんてあるわけがない。その仕事が大好きであることと絶対できると信念を持つこと。Rovioが成功したのは、(まったく相手にされなかった)51ゲームを作っているときでも、この2つを心に持ち続けていたからだ」(同氏)
ちなみに、Angry Birdsはリリース後15カ月間で1億ダウンロードを達成した。その後、Rovioはアニメスタジオを買収し、Angry Birdsのアニメ化にも着手している。現在はアニメ製作とキャラクターのライセンスビジネスも、収益の柱となっているという。
「Angry Birdsのキャラクターの認知度は中国では93%、インドでは91%、米国では90%あり、コンシューマーブランドの中では最も成功したと思っている。日本での認知度はこれらの国ほど高くはないが、積極的にプロモーションしていきたい。ライバルは『ハローキティ』だ」(Vesterbacka氏)
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