起業家よ、クレージーな信念を持て--育ての親が語る「Angry Birds」秘話 - (page 2)

“ぬかるみの世界”が生み出すベンチャー魂

 現在、Vesterbacka氏は学生たちの起業マインドを育てる活動に注力している。その1つが「SLUSH」だ。これは、起業を考えている学生をベンチャー企業の経営者らと引き合わせ、起業を支援するイベントである。同氏はSLUSH立ち上げの動機を「起業に後ろ向きな学生が多かったから」と説明する。

 「以前、フィンランドの大学で講演した際、学生600人を対象に『起業したいか』を訪ねところ、『したい』と回答したのは3人だけだった。当時は起業を支援する仕組みがなく、学生たちは『起業する人=クレージーな人』だと考えていた」(Vesterbacka氏)

 同氏は自分の人脈を使って起業家や投資家と集い、学生らを支援する方法を模索した。そこで誕生したのがSLUSHというわけだ。同氏がこだわったのは(起業が活発な)シリコンバレーのまね事にならないことだった。

 「フィンランドらしさを追究した結果、長くて寒い冬に開催するのがよいという結論に至った。どうせなら道が“SLUSH(ぬかるみ)”状態でカオスの中でやることにオリジナリティがあると考えた。運用は完全にボランティアで、楽天の三木谷浩史社長にも参加してもらった。いわば、世界的な起業家ネットワークの構築の場だと言ってよいだろう」(Vesterbacka氏)

 同氏はアジア地域でもSLUSHを開催すべく「SLUSH Asia」を設立し、2015年5月には日本でアジア初のSLUSHを開催した。その経緯についてVesterbacka氏は、「2014年に安倍総理と会ったとき、自分はAngry Birdsがプリントされた真っ赤なパーカーを着ていた。自己紹介で『アベノミクスの第三の矢で手伝いができる』と伝えたが、安倍総理は『クレージーじゃないか』という目で私を見つめた。その場にいた三木谷さんが私のことを説明してくれたが、安倍総理は(Angry Birdsのことを)知らなかったようだ」というエピソードを披露した。

フィンランドRovioのPeter Vesterbacka氏は2年前もこのスタイルで安倍総理に会ったそうだ
2年前もこのスタイルで安倍総理に会ったそうだ

 最後にVesterbacka氏は、「日本で(何かをする場合は)白髪で背広を着ていないと信用されないと言われた。しかし、日本で開催したSLUSHには3000人が参加し、大成功を収めている。日本の学生も『不可能なんてない』というマインドを持ち、起業にチャレンジしてほしい」とエールを送った。

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