Appleは3月21日に開催したイベントで、iPhone SEを発表した。すでに3月24日から予約が始まっており、3月31日に発売となる。筆者は、ローズゴールドのiPhone SE 64Gバイトモデルを先行レビューした。大画面化競争に終止符を打つような、非常に存在感のある、最も小さなiPhoneの登場だ。
4インチを搭載するスマートフォンとしては2年ぶりのリリースとなるiPhone SEは、2015年9月に発売したiPhone 6sと同じ性能を凝縮した。iPhone 6sから劣っている部分はいずれもハードウェアとデザインに由来する。
iPhone 5sと全く同じ外観デザイン、ディスプレイサイズと解像度、品質、セルフィー用FaceTimeカメラのセンサ、3D Touch非対応、旧世代Touch ID、気圧センサなし。
裏を返せば、これ以外のスペックである、A9プロセッサや1200万画素iSightカメラ、Apple Payのサポートなどは、iPhone 6sと同じということだ。ベンチマークをしても、iPhone 6sをわずかに上回るスコアをたたき出し、4Kビデオの撮影と編集まで、この小さなボディでこなしてしまう。
同じサイズのiPhone 5sとカメラを比較してみると、静止画では解像度はそれまでの3264×2448ピクセルから4032×3024ピクセルに拡大している。
iPhone SEは、既に4.7インチ、あるいは5.5インチのiPhoneに触れた人にはお勧めしない。筆者も含め、大画面への慣れは、驚くほど4インチディスプレイを窮屈に感じさせるからだ。
しかし4インチスマホが気に入っている人は、すぐにでも乗り換えて、最新のiPhone体験にアップデートすべきだろう。64Gバイトモデルを選んでおかないと、その体験が制限されることになる点もご留意を。
iPhoneは毎年9月に新製品を発表し、これを1年間販売するサイクルを採っている。さらに、2年おきにデザインを刷新する。
もう1つパターンを見出すなら、デザインを変更しないセカンドモデルに最新の機能や新たなインターフェーイスを搭載することもしてきた。例えば、iPhone 4SのSiri、iPhone 5sのTouch ID、そしてiPhone 6sの3D Touchがそれにあたる。
こうしたサイクルにおいて、iPhone SEは、3月発売という新たなサイクルを加えることになった。ただし、これまでの数字によるナンバリングからは外れ、「Special Edition」の頭文字ともいえる「SE」を冠していることは、この4インチスマートフォンが特殊任務を帯びていることの表れだ。
iPhone SEの登場で、各iPhoneのポジショニングは次のようになった。
これまでで最も、「戦略的」なラインアップを獲得したと考えている。言い換えれば、いままでは無策だったということだ。なぜなら、毎年新機能を搭載する最新のiPhoneをリリースし、それまで販売してきたスマートフォンの価格を下げて併売するだけ。これがiPhoneについてAppleが取り組んできたことだったからだ。
AppleはiPhoneに戦略を取り入れる必要性は明らかだった。2014年に放った効果絶大の「大画面化」バズーカの息切れで、2015年にiPhone販売の成長がピタリと止まった。今後販売台数としては世界的な低成長時台へ突入することも、「スペック・大画面」という単純な進化の時代の終焉を意味している。
iPhone SEに2015年発売の旗艦モデルのスペックを詰め込んだ点、あるいは詰め込むことができた点は、非常に大きな意味を持つ。大きいから高性能という価値観を崩し、自分のスタイルに合ったスマートフォンを選べば、最新の体験が得られる価値観へと転換をしているからだ。
確かに大画面に慣れた後では「窮屈なだけ」に感じる。ただ、米国でSIMフリーモデルが399ドルからという価格設定と、画面サイズ以外のほぼすべての体験を最新のものとしたiPhone SEは、iPhone販売台数を踊り場に停滞させない意義を持つことになるだろう。
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