2つ目のマイナス面は、完成を待たずに5Gをリリースした場合、5G技術の有用性が損なわれ、利用料金が高額化する可能性があるということだ。その理由は、チップ、ネットワーク機器、スマートフォンなどあらゆるメーカーが、互換性のない新しいバージョンのための技術を開発しなければならないからだという。モバイルチップメーカーQualcommの最高技術責任者(CTO)Matt Grob氏はそう述べている。小さな市場が多く出現すれば、製品の価格が上がることになる。そのコストは毎月の電話料金に転嫁されるかもしれない。
「通信事業者2社が推進役を担っており、当社はそれをサポートしているが、その一方で、(5Gの)バージョンが増えれば、それだけコストがかさむことになる」(Grob氏)
標準化前のバージョンの5Gを使ってネットワークを構築することには、もう1つ問題がある。新しいキャリアに乗り換えたときや、旅行中に他のネットワークでローミングする場合に、5Gの潜在能力をスマートフォンで活かせないということだ。
最初に登場する5Gは、携帯電話向けですらないだろう。AT&Tは、2016年に5G技術を利用してテキサス州オースティンの各家庭を高速ワイヤレスブロードバンドリンクに接続する計画だ。Verizonも、固定ではないデバイスで5Gネットワークを利用するという技術的にさらに難しい課題に取り組んでおり、2017年に5Gサービスを投入する計画だが、具体的な内容は明らかにされていない。
携帯端末で最初に5G技術が使われるのは、2018年、韓国で開催される冬季オリンピックのころだろう。通信事業者KTはその大会で、新しいネットワーク技術をいち早く導入する企業という地位を堅持しようと、強い意欲を示している。
韓国のビジネスパートナーであるサムスンにとっても、スマートフォンの供給によって存在感を示すチャンスだ。「当社も関与するつもりだ」と、サムスンで次世代テクノロジ事業を率いるWoojune Kim氏は語った。
ネットワーク機器メーカーのNokiaは、「標準化前の5G製品」を家庭用ブロードバンドの試験目的で2017年にリリースする予定だが、完全な商用化は標準策定の2年後である2020年になるという。同社のイノベーションマーケティング部門の責任者を務めるVolker Held氏は、このように述べている。
互換性のない5G技術が早くから利用されることについては、Intelも懸念を示している。「その点が非常に気になっている」と語るのは、IntelのコミュニケーションおよびデバイスグループのジェネラルマネージャーAicha Evans氏だ。だが、5G関連の業界団体が次々と設立されているため、そうした協力態勢によって問題の芽が早い段階で摘み取られるものとEvans氏は楽観視している。
AT&Tは、期待が高まることのリスクを認識している。「当社が避けようとしているのは、宣伝ばかり過剰になって実際の製品が見劣りすることだ」。AT&Tのコンシューマー向けモビリティ事業の責任者であるGlenn Lurie氏はこのように語った。
このように慎重姿勢の企業ばかりではない。ネットワーク機器メーカーのEricssonは、5Gの盛り上がりを歓迎している。
それによって緊迫感が生まれるとともに、現状をよしとする気運が一掃されるからだと、CTOのUlf Ewaldsson氏は言う。「長期的に見て、ネットワークの重要性が増す最大のチャンスだ」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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