次に、モデレーターの森山氏より「電力事業や電気の使い方が今後どう変わっていくのか」という質問がされた。ガスの供給だけでなく、機器の販売やサービスも提供してきた東京ガスの笹山氏は、今後新たなサービスが出てくるのではと推察する。
「電力の自由化を契機にスマートメーターが各家庭に付き、30分ごとの電気の使用量がわかるようになる。プライバシーに配慮しながら、省エネに役立つ使い方の提案や、見守りサービスへの応用が可能となる。ほかの企業とのアライアンスやサービスの組み合わせによる新たなサービスも考えたい」(笹山氏)。
磯崎氏は3つの観点から見るべきだと語る。「まず、国の政策で目指していく課題としての見方、それから電力事業者の見方、そして消費者の見方がある。国はCO2の削減を世界に向けて約束しているため、太陽光や風力発電のような再生可能エネルギーの普及を進めている。太陽光発電に補助金を出したり、固定価格買取制度(FIT)で電気を高く買ってくれたり制度ができた。しかし、再生可能エネルギーには夜には発電できないなどの課題があり、安定供給に支障が出てしまう。
さらに、原発の停止により比較的燃料コストの安い電力がなくなっている。太陽光発電や代替えの発電所が建てられているが、燃料コストは上がってしまう。一方、消費者からは安く電気を使いたいという要望がある。再生可能エネルギーの普及と安定供給、燃料コストの安い電気をどう実現するかが問題にある。
最大の課題は、太陽光で発電する時間と実際に電気を消費する時間がずれていることで、EMS(エネルギーマネジメントシステム)を使ってこのずれをマッチングさせつつ、HEMS(ホームエネルギーマネージメントシステム)で、電気を上手に使う環境に変わっていかなければならない」(磯崎氏)。
伊藤氏はエネルギーを自給自足できる住まいをスタンダードにしたいと語る。「エネルギーを太陽光で作ることを推進してきたが、これからは蓄電池に貯めることもすすめていきたい。災害時でもエネルギーを安定供給できる住まいこそスマートハウスだと考えている。電気を身近に感じ、自然に節電ができる行動へと移せるようになることもスマートハウスの役目。 スマートHEMSを利用している顧客から、電気を“見える化”することで家族で電気についての会話が増え、節電するようになったと聞いた。無理をして節電するのではなく、知らず知らずのうちに電気をうまく使えるように変わっていくのではないか」(伊藤氏)。
消費者は電力自由化に期待する半面、不安や戸惑いを感じている。いったい何が変わるのだろうか。
笹山氏は「品質や信頼性はまったく変わらない。変わるのは、電力会社が選べるようになり、いろいろなサービスとともに提供されるようになること。東京ガスはライフステージに応じたサービスを提供する。2年縛りなど解約金も設定しない。事業者の切り替えは難しくないので、安心して自由化のメリットを感じてほしい」と話す。
磯崎氏は「自由化に関して各社の料金メニューを検証したところ、万人がお得になるわけではないとわかった。自分の使い方に合った電気をどう選ぶかが大切だ。使用総量だけではなく、時間帯ごとに何に電気を使っているのかを知ることから始めるとよい。HEMSではそうした細かな使用料まで把握ができるが、まだ一般的ではなく、新築以外への導入も可能だが、そこまで紹介しきれていないのが現状。今後の課題と考えている」と語った。
伊藤氏は、電気をどう使うかについて議論から一転「視点を変えたお話をしたい」とし、住まいの性能を高めることで電気を使わない住宅を提案した。「断熱性が変わるだけで、家族の関係が変わることもある。住まいの性能にも着目して、エネルギーを使わない住宅を提案したい」と話す。
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