スマートフォンネイティブが見ている世界

ガチャだけではない--子どもがソーシャルゲームにハマる理由 - (page 3)

お金を使った実感に乏しい課金の仕組み

 仕事でスマホゲームを始めたIT業界の人に話を聞いたが、その感想が興味深い。「あと少しでクリアできないのはかなりストレス。わずか数百円でクリアできるならと課金した。しかし一度課金すると、課金への心理的抵抗がなくなり、あとは次々と課金してしまった」。

 ネオマーケティングの「ソーシャルゲームに関する実態調査」(2012年5月)によると、課金する理由のトップは「課金してイベントをクリアしたいから」(45.3%)。続いて、「少額だから」(32.4%)、「多少の課金なら趣味の範囲として高いわけではないから」(29.4%)となっている。つまり、ストレスから逃れるために課金する人が多いだけでなく、1回の単価がわずか数百円と安価なことも課金への心理的抵抗を減らしているのだ。ガチャの単価は1回あたり300~500円程度と、中高生でも十分に支払える金額だ。だからこそ課金への敷居が低く、「たった300円なら」と課金してしまうのだ。

 通常のスマホゲーム、ソーシャルゲームでは、実際にお金を支払ってから課金するまでにタイムラグがある仕組みをとっている。これが、財布を取り出して現金を支払う仕組みだったら、心理的ストッパーがかかったことだろう。たとえばクレジットカードで使いすぎてしまうのは、使った実感に乏しいことも影響しているはずだ。

 同様に、App Storeならパスワードを入力しさえすれば課金でき、実際に支払うのはずっと後になるため、支払った実感が乏しい。仮想通貨で支払う場合は、App Storeでパスワードを入力して仮想通貨を購入し、仮想通貨で仮想アイテムやガチャなどを購入するという手順を踏むため、買ってから実際に使うまでにタイムラグがあり、支払った実感がさらに乏しくなる。プリペイドカードもクレジットカード同様、支払っている時は使っている実感が薄くなる点が問題となるのではないか。

 ソーシャルゲームやスマホゲームは民間企業が運営しており、運営費などをまかなう必要がある。ユーザーに課金を促進させる仕組みになっているため、大人でも中毒状態になって課金する人が後を絶たない。ましてや10代の若者たちがゲームにハマり課金してしまうのは、ある意味当然と言えるだろう。保護者は、無料とうたわれるゲームの仕掛けを知り、子どもたちが安易に使う危険性を知るべきだろう。使う場合も、子どもたちがハマりすぎないよう注意して見守る必要があるだろう。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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