2月16日~2月22日のAppleに関連するCNET Japanのニュースをまとめた「今週のAppleニュース一気読み」。
FBIは裁判所を通じてAppleに対し、殺人事件の犯人のiPhoneをアンロックするように求めてきた。これに対し、AppleのTim Cook CEOは非難し、回答期限となった米国時間2月22日にこの命令を拒否することを表明した。
2015年12月に発生した、カリフォルニア州サンバーナーディーノ市の銃乱射事件では、14人の命が奪われ、17人が重軽傷を負った。イスラム国に忠誠を示していたとされる犯人のうちの1人がiPhone 5cを使用しており、このiPhoneのロックを解除して中身のデータにアクセスできるようにする「捜査協力」をAppleに課したのだ。
もう少し正確に状況を説明すると、こうなる。パスコードロックをかけているiPhoneは、オプションで10回間違えると端末内のデータを消去する機能がある。つまり、制限回数以内に正しいパスコードを入力しなければ、犯人のデータへのアクセスが不可能になる可能性があるのだ。
そこで、FBIはAppleに対して、このパスコードの解除、あるいは10回間違えても端末のデータが消去されないようにせよと求めているのだ。
これに対してAppleは、そうしたソフトウェアや技術をこの世に存在させてしまうこと自体に懸念を持っている。Cook氏は、「ひとたび作られれば、そのような技術は何度にもわたって、何台もの端末で使われる可能性がある」と述べ、事実上のバックドアとなり得るとの考えから、拒否している。
Appleは、Cook氏の公開書簡をウェブサイトに掲出し、Appleの考えと拒否する理由について説明している。
Appleは、その他のスマートフォンにはない「プライバシーの保護」を提供しようと努めてきた。秘匿性の高いメッセージ交換が行えるiMessageや、ニュースなどに用いられる機械学習の結果を第三者やアプリで使用しないというポリシーを繰り返しアピールするなど、自社サービスにとって不利になっても、データが確実に守られる点を強調している。
そのため、Appleとしては、犯罪捜査であっても、証拠を取り出すためにあらかじめ技術的に設計することには、断固として拒否していくことになるはずだ。同時に、前述の公開書簡でも、米国における国民的な議論へと発展させたい考えがうかがえる。
AppleのFBIに対する争いについて、GoogleやTwitter、Facebook、What’s Appといったテクノロジ企業のトップは、「Apple支持」を表明している。
一方、この問題にかみついたのは、極右大統領候補として知られるドナルド・トランプ氏だ。「Appleは何様のつもりだ?」と厳しく非難した上で、「皆さん、常識で考えて下さい」と有権者に呼びかけた。つまり、個人のプライバシーは、生命の安全を含むセキュリティ、安全保障の上に成り立っているという論理だ。
ただ、バックドアをiOSやOS Xなどのソフトウェアに存在させることは、巡り巡って、セキュリティをむしばむ可能性も高まる。既に米国はサイバー攻撃の被害にさらされており、ソフトウェアの機能としてのバックドアは、サイバー攻撃の標的となり得るからだ。
つまり、トランプ氏のセキュリティの上にプライバシーが成り立っている、だからセキュリティを守るためにAppleはバックドアを設けて捜査協力しろという論理は破綻していることが分かる。Appleは裁判所への回答の中で、「中国ですら要求していない自社製品へのアクセス求めている」としたのも、サイバー攻撃の背景からだろう。
一方で、Cook氏が、FBIへの捜査協力とバックドアをイコールで結びつけた点についても批判がある。
裁判所が設定したAppleの回答期限は2月22日だったが、それ以前に同社が公開書簡を公表して、協力を拒む見通しであったため、2月19日に裁判所は追加でAppleに対して協力するよう促す文書を出している。
その中で、こうしたAppleの行為に対して「宣伝に利用している」と断じており、自社製品のマーケティングのゴールを、国家安全保障より上位に置くべきではないとAppleを批判している。
T・クック氏、「iPhone」ロック解除をめぐる裁判所命令を非難–銃乱射事件の捜査で(2/18)AmazonやNetflix、Huluは、オンラインでの映画やドラマの配信サービスを提供してきたが、昨今はいずれも自社制作の映画やドラマに力を入れており、ゴールデングローブ賞などでの受賞も目立ってきた。この動きは、米国大手のケーブルテレビ会社であるComcastが、NBC Universalを買収してコンテンツ制作に乗り出す動きと共通している。
Appleはテレビサービスへの参入の噂がずっとあり、それが上手くいっていないとの情報もある。目立った動きが見られない一方で、第4世代となる新型Apple TVではApp Storeを解放し、各テレビネットワークやケーブルチャンネルが自社アプリを公開している。過去のコンテンツを視聴したり、生放送をネット経由で見られたりする機能を備え、Appleがどのようにしてテレビサービスを扱うのか、その片鱗が見えつつあるのも事実だ。
そんな中、Appleも、オリジナルの番組を制作するというニュースが出てきた。タイトルは「Vital Signs」で、ドクター・ドレー主演の6話シリーズのドラマだという。同氏はラッパーとして、また起業家として著名で、現在はBeatsを買収したAppleの幹部に名を連ねている。
ネット配信系のサービスが自社作品を制作するメリットは、その作品を独占的に配信することができ、これを目当てにする新規加入者を集めることができる点だ。Appleが新たな配信チャネルやサービスを設けるのか、Apple Musicの作品として配信するのかはまだ分かっていない。
アップル、オリジナルのテレビドラマを制作か–ドクター・ドレー氏主演で全6話(2/16)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」