Appleの最高経営責任者(CEO)を務めるTim Cook氏は、テロリストが使用した「iPhone」のセキュリティ機能解除への協力を要請する連邦裁判所の命令を非難した。同氏はこれを「恐ろしい」状況であるとし、万人のオンラインプライバシーを大きく脅かすものだと述べた。
米連邦裁判所はAppleに対して米国時間2月16日、2015年12月にカリフォルニア州サンバーナーディーノで起きた銃乱射事件をめぐり、容疑者のiPhoneのロックを解除できるよう米連邦捜査局(FBI)に協力することを命じた。Cook氏は、「iOS」のそのようなバージョンを提供すれば、Appleの暗号化されたすべての端末に対するバックドアが初めて設けられることとなり、「米政府が保護するはずの自由と権利が損なわれる」と警告した。
FBIは、12月にサンバーナーディーノで14人が死亡し22人が負傷した銃乱射事件の容疑者の1人が使用していた「iPhone 5c」にアクセスしようとしている。Cook氏は、Appleのエンジニアは事件以降FBIに協力し、「FBIが捜査の選択肢として利用できる、われわれにできる限りのアイデアを数多く提供」してきたと述べている。
しかし今、米政府はAppleに対してソフトウェアの作成を求めている。そのソフトウェアとは、Cook氏いわくiPhoneに搭載されるモバイルソフトウェアであるiOSの新しいバージョンのようなもので、パスコードの入力を10回間違えるとデータが全部消去される機能を無効にするものだという。裁判所命令では、問題となっている特定のiPhoneのみを対象にそのソフトウェアを作成することを求めているが、Cook氏は、影響がそこでは終わらないと考えている。
「ひとたび作られれば、その技術は何度にもわたって何台もの端末で使われる可能性がある」と同氏は述べた。Cook氏はそのようなソフトウェアを「何億もの鍵を開けることのできるマスターキーと同じ」と表現した。
Appleが独自のセキュリティの回避を強いられるとすれば、それは、セキュリティ、プライバシー、監視といった問題に関して政府、民間企業、消費者の間で続けられている交渉における重大な分岐点となる。
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