アップルの2015年を振り返る--iPhoneの成長力、相次いだ新製品 - (page 2)

(3)相次ぐ新たなハードウェア--MacBook、Apple Watch、iPad Pro

 2015年はAppleの新ハードウェアが多数く登場した1年だった。3月に登場したMacBookは、Retinaディスプレイを備えた12インチのモバイルノートブックで、Core Mという新しいIntelのプロセッサを採用した点も特徴だ。2015年はMacBook Airが小規模な改訂に留まったことから、2016年はMacBook Airの11インチモデルの存続も気になるところだ。また、シリーズ全体の構成変更も予測される。

 4月に登場したのはApple Watch。38mmと42mmの2つのサイズ展開で登場したスマートウォッチは、9月までに700万台の出荷があったとみられる。10月以降は、最も価格の安いスポーツモデルにゴールドとローズゴールドを加え、iPhoneとのカラーコーディネートを実現している。また、高級ブランドHermesとのコラボモデルも登場させ、商品力を高めた。2015年いっぱいで1000万台以上の販売が確実視されている。

 10月にはA8プロセッサを搭載したApple TVがリリースされ、また11月には前述のiPad Proが発売となった。いずれも、これまでのiOS系デバイスの中ではより大きな画面サイズを取り扱うことになり、アプリのデザインやインターフェイスの手法にも、今後影響してくるだろう。

 なお、新ハードウェアという観点で言えば、Apple TVに付属してくる音声認識とモーションセンサを備えたSiri Remoteと、iPad Proと組み合わせて使うApple Pencilという2つのデバイスも登場している。加えて、Mac向けにはBluetooth接続のMagic Keyboard、Magic Mouse 2、Magic TrackPad 2がリリースされている。

 これらのデバイスはいずれも、Lightningで充電を行うスタイルを採用しており、今後のハードウェアの1つのパターンを作っていくことが考えられる。

(4)エンタープライズ市場の強化

 AppleはIBMとの提携に続いて、Boxとも連携するなど、エンタープライズ市場への取り組みを強化している。iPhone、そして特にiPadの市場拡大には、ビジネス向けの販売拡大が不可欠な状況となっている。そのため、アプリ開発のパートナーや、エンタープライズ市場で人気のあるサービスとの連携に取り組んできた。

 iPad、iPad Pro、そしてiPhone、iPod touchは、いずれもiOS向けのアプリ開発を行えるデバイス群だ。これらのデバイスは、専用端末との置き換えがより加速していくことが考えられる。

 例えば、日本で見かけるオーダー端末やレジ端末、検査記録用のタッチパネルデバイスなどは、その業種専用のデバイスとして開発され、ソフトウェアが組み込まれている。これらのデバイスのAppleデバイスへの置き換えは今後もより進むと予想される領域だ。

 iPad ProやiPhoneであっても、相対的にデバイスそのものの価格が安く済むからだ。あとは、専用端末の機能を実現するアプリを、iOS向けに開発できるかどうかの問題だ。エンタープライズ向けのアプリ開発については、Appleがより支援を強めるべき領域となるだろう。

(5)テレビと音楽とニュース、編集力による挑戦

 最後にサービス系の話だ。Appleは6月にApple Musicを開始し、定額制の音楽サービスの展開を開始した。これまでのiTunes Storeは残され、引き続き音楽、映画の販売とレンタルを行っているが、今後映画やドラマといった映像分野へも、同様の定額制サービスを展開していきたいとみられる。しかし、ケーブルテレビのビジネスと完全に競合することもあり、その交渉は難航している模様だ。

 音楽に加えて、iOS 9に新たに搭載されたニュースについても注目だ。残念ながらGoogleやFacebookなどのような詳細なアクセス情報が記事提供元にフィードバックされないなどの問題もあるが、iOS標準の機能から記事へのトラフィック誘導が行われている点は非常に魅力的だ。

 音楽とニュースに共通しているのは、ジャンルごとにAppleのエディターがセレクトしている点だ。もちろん好みに応じて機械的にレコメンデーションを行う仕組みもあるが、Appleのサービスとして人によるキュレーションをウリにしていく方針は、他のサービスとの差別化を図る上での特徴となるだろう。

 Appleが機械的なおすすめの掲出に消極的なのは、プライバシーポリシーに関係している。Appleも機械学習を取り入れているが、そのアプリの情報はアプリ内に閉じて利用すること、自社・サードパーティー問わず、外部アプリとの間で情報の共有は行わないことをポリシーとしている。この点は、特にエンタープライズユーザーからの支持を集めているが、その一方で先進的なレコメンデーションに踏み込めない制限にもなっている。

 そこで、専門家によるセレクトを打ち出している。個人的には、人の手による選択は、意外な魅力として扱われることになるのではないかと考えている。

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