ジャカルタやスラバヤなど大都市に多くの外資系IT企業が拠点を構え、アジア筆頭のIT新興国として期待がかかるインドネシア。一方で、都市部と農村部の経済格差は激しく、農村部では毎日の平均収入が2.5ドル以下という貧困層の世帯が数多く存在し、インターネット普及率もわずか16%に留まっている。
そんな、同国の農村部のそれぞれの地域に合ったアプローチで、インターネットの普及と貧困の撲滅に同時に取り組む現地のベンチャー企業が「Ruma」だ。
Rumaは、主に平均日収が2.5ドル以下の個人を対象に、モバイル端末でお金を稼ぐ仕組みを提供する。彼らはこの個人を「エージェント」と呼び、エージェントは地元の人びとにRumaのアプリを使って電気代の支払いやローン返済の手続き、求人広告の閲覧などオンラインサービスを提供する。
エージェントには、もともと自宅でお菓子や日用品を販売する昔ながらの個人商店の主が多い。こうした商店は、現地の言葉で「Toko(トコ)」と呼ばれ地域のコミュニティが集まるハブにもなりやすい。
エージェントはスマートフォンやタブレットをRumaから借り入れたお金で購入し、サービスを提供する。地元の人びとは電気料金を支払ったりプリペイド式携帯電話のトップアップなどをしたいとき、エージェントを訪れ依頼する。すると、エージェントがアプリを使って支払いやトップアップを完了させる。
このとき依頼主である地元の人びとは少額の代行費用を支払い、エージェントはRumaとそれを折半する形で収入を得るという仕組みだ。つまり、Rumaは農村部においてオンラインへのアクセスをより身近なものにすると同時に、エージェントの育成を通してマイクロアントレプレナーの創出、そして農村部の貧困解消に取り組んでいるのである。
最近では、Golden Gate VenturesやUnitus Impact、Omidyar Networkなどから資金を調達した。現在、エージェントの数は約3万人、Rumaを通したオンラインサービスの利用者は150万人にのぼる。
インドネシア農村部に住むSumarniさん(39歳・女性)は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙でも紹介された、Rumaのエージェントだ。菓子や日用品を販売する個人商店を自宅の一画で営む傍ら、エージェントの業務にも従事している。彼女はエージェントの仕事で1日に10ドル程度の収入を得ているという。
SumarniさんはRumaに出会うまでスマートフォンやタブレットを使用したことがなく、スワイプ操作の概念すら知らなかったが、アプリには大きな「次へ」ボタンやカラフルなアイコンボタンが施されるなどしてあるため、操作に困ることはなかったそうだ。彼女はエージェントになって増えた収入で、新しいバイクを購入したり、息子を技術学校へ行かせたりすることができたという。
さらに最近では、Facebookで手作りのハンドバッグを売るオンラインストアを開設したり、ケーキ販売イベントをコーディネートしたりと、自ら積極的に小さなビジネスを始めるようになった。「いまは情報がすぐそばにあるので、以前より世の中のことが分かるようになった」と同紙のインタビューで語った。
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