パナソニックが発表した2015年度上期(2015年4~9月)の連結業績(米国基準)は、同社の堅調ぶりを示すには十分な内容になったと言える。売上高は前年同期比1.0%増の3兆7604億円、営業利益は同13.3%増の2005億円、税引前利益は同34.6%増の1641億円、当期純利益は同37.6%増の1113億円と増収増益となった。
代表取締役社長の津賀一宏氏は、「為替がプラスに影響しているところもあるが、下期には為替影響を抜きとする『実質反転』の手触り感が出てくるはず」とコメント。為替頼りではない反転攻勢の実現が間近に迫っていることを示してみせた。
積極的な設備投資していることも強調した。「今年度に3000億円を超える設備投資を行っており、そのうちの55%が国内向け。ここ数年では、最大規模の投資を国内向けに行っている」と説明。「非連続での成長に向けて、水面下では積極的に手を打っている。戦略投資は当初計画よりも前倒し、あるいは増額してやっていくつもりだ」と、投資戦略を加速する姿勢を示した。
代表取締役専務の河井英明氏は、2015年度上期決算を総括し、「ソリューション事業や白物家電事業が伸長した。為替効果も増収につながっている。全社的な事業構造改革や合理化の効果も出ている。また、事業撤退や縮小の影響も、収益の改善につながっているおり、高付加価値製品へのシフトも大きなプラス効果になっている」と解説した。
2015年度の通期業績見通しでは、売上高が前年比3.7%増となる8兆円、営業利益は同12.6%増の4300億円、税引前利益は同64.4%増の3000億円、当期純利益は同0.3%増の1800億円という目標は据え置いた。
「市況変化を考えると、年間8兆円の売上高達成に対するハードルは高まっている」として、売上高では未達になる可能性を暗に示唆。だが、「売り上げがいかなくても、営業利益を出せる体質になっている」とし、利益重視の姿勢とともに体質が大きく変化していることを示してみせた。営業利益率は5%台を維持する考えだ。
河井氏は、「昨年の事業売却の影響を事業全体でカバーしようとしているが、市況の悪化もあり、厳しいことは認識している。しかし、これまでの事業構造改革の取り組みにより、収益体質は確実に改善している。売り上げが厳しい中でも、営業利益は年間見通しの達成を狙っていく」と補足した。
セグメント別では、アプライアンスの売上高が前年同期比2%減の1兆1719億円、営業利益は同9%増の435億円。エコソリューションズは、売上高が同2%減の7723億円、営業利益が同27%減の304億円。AVCネットワークスの売上高は同7%増の5708億円、営業利益は前年の8.2倍となる319億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは売上高が前年並の1兆3866億円、営業利益は前年同期比5%増の611億円となった。
テレビ事業の売上高は、第2四半期実績で前年同期比15%減の872億円、営業利益は前年同期の22億円の赤字から5億円の黒字に転換した。
河井氏は、「日本では、4Kによる高付加価値製品が好調に推移。材料合理化や事業構造改革による固定費削減で黒字転換している。テレビ事業が全社の収益改善を牽引するまでには至っていないが、通期黒字化に向けて着実な進捗をみせている」と説明。中国や米国での販売絞り込みも、テレビ事業の採算性の改善に貢献しているようだ。
液晶事業については、非テレビ化へのシフトが功を奏している。
津賀氏は、「円安効果に加えて、テレビ用パネルの価格競争力が出てきた点も見逃せないが、これはあくまでもつなぎのものだと判断している。医療用や車載用などの非テレビ領域へのシフトを一層進めていく。長期的な安定性を第一義に考えていく」と述べた。液晶事業は4四半期連続で黒字化しているという。
白物家電については、国内外ともに好調で、「日本とアジアで冷蔵庫や洗濯機などが引き続き堅調に推移。インバウンド需要から炊飯器や美容関連製品が伸張している」と語った。白物家電は国内では前年同期比6%増、海外は10%以上の成長を遂げているという。
津賀氏は「白物家電の商品展開では、これまでコンサバティブなところもあった。だが、日本市場に向けては目新しい製品を積極的に投入し、海外でも製品ラインアップの強化に取り組んできた。白物家電事業とテレビ、ホームエンタテインメント事業の一体化、開発と製造とマーケティング本部を一体化したことで、分かれていたことによって発生していた問題がひとつひとつ潰されていることが成果につながっているのではないか」と語った。
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