ほんの数年前まで、従来型の携帯電話でさえめったに見かけることのなかったヤンゴンだが、ここ1~2年で急速にスマートフォンが普及。バス待ちの乗客や喫茶店でくつろぐ客たちが、「Viber」をはじめさまざまなアプリを楽しむ姿が目に付くようになった。そんな中、広い年代のミャンマー人にダウンロードされているのがお経を収めたアプリだ。
日本は、修行を積んだ僧侶が大衆に向けて釈迦の教えを説き、それによって人びとが救われると考える大乗仏教国だが、ミャンマーは全人口の約90%が上座部仏教徒。大衆ひとりひとりが修行し、悟りを開くことを目指す。そのため、熱心に読経に励む人が多い。
ひと口にお経といってもその数は膨大だ。すべての経典をどの程度暗誦できているかを測る試験もあり、覚えきったと認められた僧侶は三蔵憶持者として尊敬を集めるが、ミャンマー全土でもここ半世紀ほどで16人しかいない。
一般人の場合は、お経を全文ではなく、短縮して唱えることが多い。それでも、比較的頻繁に読経する分だけで30種類以上あり、曜日やシチュエーションによっても違ってくる。悪霊を駆逐するお経、火事に遭ったら唱えるお経、出産中向け、交通安全、事件の被害にあった時用、蛇やサソリに刺されないように、など「効能」は枚挙に暇がない。
このため、出先で読経したい場合は経典を集めた本をカバンに入れていくことになる。最低限必要なお経だけを集めた薄い小冊子もあるが、中には分厚い本を持ち歩く人もいる。これがスマホで代用できるわけだから、人気が出るのも頷ける。
基本的に、お経アプリのダウンロードは無料だ。「お経で金儲けなんてとんでもない」というミャンマー人がほとんどだからだろう。お経自体はネットにたくさんころがっており、アプリの制作者はそれらを集め、どう見せるかを競うことになる。お経アプリのダウンロードサイトを集めたサイトも数多くあり、誰でも手軽に利用できるようになっている。
数多くのアプリが配信される中、若い人たちを中心として全世代に人気が高いのが「ダーマドロイド/Dhana Droid」だ。現地英字紙「ミャンマータイムズ」2014年10月の記事によると、記事の時点で50万人以上が利用しているという。同アプリには数々のお経が文字だけなく音声でも入っており、それが人気を集める理由のようだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス