ミャンマーのお経は、ビルマ文字以外に、ビルマ語の成立にも大きく影響を与えたパーリ語の文字も混じえて綴ってあり、よほど教養の高い人か、経典に通じている人でないと読みこなせない。その点、音声付きであればアプリで流しながら追唱することも可能で、若い人の中には自分で唱えずに、お経の音声だけでお参りをすませるちゃっかり者もいるとか。
同じ経典アプリでも、音声を装備していないものは少し年代が高い人たちの利用が多い。このタイプで人気なのは「ダーマ/Dhamma」。よく唱える基本的なお経がほぼ揃い、読み方が難しいものについては、読み方と意味を追加したバージョンも収めている。同じタイプのお経をひとまとめにしたページを、クルクルと回転させて表示する目次が、探すお経を見つけやすいと評判だ。
「ダーマ」を作ったミョーテッハンさんは、ミャンマー第2の都市マンダレー在住の31歳。長距離バスの会社や携帯電話ショップなどを経営しており、プログラミングは完全な趣味。このアプリ以外にも、遺跡都市バガンの観光案内やミャンマーの歴史上の偉人についての知識を得られるアプリなどいくつか作ったが、すべて無料で配布している。
「母が毎日、重いお経の本を持ってパゴダへ行くのを見て、母にとって使いやすい経典アプリを自作して誕生日プレゼントにしようと思ったんです。停電の多いミャンマーでも、アプリのお経なら暗い中で読めますしね。友人と妹に協力を仰ぎ、10日ほどで仕上げました」
2013年に制作し、これまでに10万回ほどダウンロードされているそうだ。
スマホの普及は僧侶にも広がっており、年配の僧侶が弄っている場面もよく見かける。そもそも、上座部仏教では、僧侶が袈裟や托鉢用の鉢、ウチワ、傘など、わずかな身の回りのもの以外の財産を持つことを禁じている。携帯電話については、在家信者との連絡に必要なツールと考える人もいるが、若い僧侶が世俗に染まるのを助長するとして、否定的な声も多い。
先日参加したある家庭での仏教祭事では、僧侶が手にしたスマホに向かって読経していた。海外に住む親族も、Viberを通して祭事に参加できるようにとの配慮だとか。スマホが本格的に上陸しはじめてまだ日が浅いミャンマーだが、すでに仏教文化にも浸透しつつあることを実感させる光景だった。
(編集協力:岡徳之)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)