一方で、この挑戦が成功するためには、越えなければならない難しいハードルが残されているのも事実だ。音楽業界関係者に話を聞いたところ、いくつかの課題を挙げてくれた。
まず、エイベックスの狙いについて。「自社で販売する楽曲の著作権管理までを手元に置くことで、JASRACに預けることで発生する手数料を抑えることが狙いだとすれば、楽曲使用などに多少の影響がでる可能性はあるにせよ、大きな問題にはならないでしょう。しかし、他のレコード会社楽曲を巻き込んで、JASRACに対抗しうる組織を作り上げようというのであれば、課題は一気に膨れ上がります」。
これは、著作権管理事業団体として色のない運営を目指し、分配額や手数料などでJASRACとの差別化を図ったとして、実質的にレコード会社であるエイベックスが立ち上げた管理団体にライバル社が楽曲を預けることができるのか、という指摘。楽曲を預けることでどこまで会社内部の情報・戦略などが伝わってしまうのかにもよるが、関係者の口ぶりから察するに手放しで楽曲を預けられる状況にはないようだ。
また、要となる自社管理楽曲の使用においても、簡単にはいかないという。「大ヒット曲、特にテレビ番組やCMとタイアップしてヒットした楽曲については、多かれ少なかれ著作権所有の契約が複雑に入り組んでいます。その管理先をJASRACから移動するとなると、それらすべてから許可を得る必要がある。テレビ局関連の音楽出版者が絡んでいることも多く、そう簡単に理解が得られない恐れがあるでしょう」(同)。
長くヒット曲を量産してきたエイベックスだけに、消費者目線で考えて「エイベックスといえばこの曲」というものは数曲挙げられる。今後も、放送番組やCMなどで聞く機会が減ることなどありえない、と断言できる有名楽曲もあるだろう。それらすべての著作権管理をエイベックス自身ができるようになれば、今回の挑戦においても大きな強みとなるが、それができないとなると話は大きく変わってくる。
かつて、一部楽曲の放送使用における著作権管理をイーライセンスに任せた際、そうした「超有名楽曲」は含まれていなかった。いわゆる「お試し」だったから一部楽曲に留めたのか、それとも有名楽曲を預けることができない状況があったのか。その答えも含め、今後のエイベックスの動きに注目したい。
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