では、映画におけるインターフェースデザインはどう生まれるのだろうか。Hansen氏は、自身が手掛けたさまざまな作品の映像を実際に会場で見せながら、「これらにはバーチャルリアリティや拡張現実のデザインに必要な要素が全て含まれている。グラフィックを通じてストーリーを伝え、しかし俳優の顔を邪魔しないことが重要だ」と強調した。「撮影時には物理的な机などとグリーンスクリーンがあって、そこをCGやインターフェースデザインを駆使して“そこに合理的に存在できるもの”が埋めていく形で作業をしていく。拡張現実によってインターフェースを表現することもあれば、タブレットやディスプレイなどをホログラフに置き換えて表現することもある」
Hansen氏によると、グラフィックデザイナーの多くはX軸とY軸という2次元でデザインを考えがちだが、映画のデザイナーは拡張現実、仮想現実などがもたらすZ軸というデザインの深みを想定して、出演者などにインターフェースの演出を伝えているのだという。しかし、実際には出演者のジェスチャーに合わせてインターフェースのアニメーション(挙動)をデザインしていく必要がある。ジェスチャーに対して合理的なインターフェースの挙動を考えていくことは、デザイナーにとっていつも大きな課題なのだそうだ。「出演者のアドリブにも対応する挙動を考案してストーリーに溶け込むインターフェースを考えていくことは、いつもチャレンジングな作業だ」と話す。
また、ヘッドマウントディスプレイやホログラフのデザインについては、より立体的なデザインが求められるという。つまり、出演者を中心として360度どこからみても合理的なデザインにしなければならない。例えば、アベンジャーズで出演者が装着したヘッドマウントディスプレイのUIは、最初にデザインのラフスケッチと指示が渡されて、それを元に初期デザインを起こす。設計にあたっては、実際に戦闘機のパイロットからアドバイスを受けながら、どのような要素が必要なのかを考えっていったのだそうだ。「ただのグラフィックじゃないかと思うかもしれないが、全ての要素に必ず意味やリアルな機能を持たせてデザインしている。フィクションでありながら、あくまで“現実”を作らなければならない」とHansen氏。そして、生まれたデザインは視聴者の視点、横からの視点、登場人物からの視点、全てにおいてデザインの整合性が担保されていなければならず、場面に応じて登場人物の動作に適合した挙動にしなければならなかったという。
プレゼンテーションの最後でHansen氏は、自身がデザインするインターフェースのユーザーは「ポップコーンを片手に映画を楽しんでいる視聴者であり、感情を持った人間だ」と改めて定義した。その上で、「“視聴者中心のデザイン”を意識しなければ、全く違うデザインが生まれていたかもしれない。著名な作品を生み出す作家は、“読者がストーリーの本当のヒーローだ”という。それをデザインに当てはめれば、私たちはスーパーヒーロー中心のデザインをしていると言える。視聴者こそが、スーパーヒーローなのだ」と語った。これをARやVRといったテクノロジにおけるリアルなインターフェースデザインに当てはめると、未来的でありながらそのデザインやアニメーションなどの挙動に合理的な意味を持たせ、ユーザーの感情を動かすデザインが求められるということを意味している。
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