スマートフォンネイティブが見ている世界

言いづらいことはネットで--LINEによる10代のコミュニケーションへの影響は

 9月5日放送のラジオ番組「ヤングタウン土曜日」(MBSラジオ)で明石家さんまさんが、「LINE世代は長文を書くこともトークも下手になるのでは」と言っている。長文を書く経験が減り、電話で話すこともないため、経験が少ないことが影響すると考えているのだ。

 さんまさんは長年フィーチャーフォンを利用していたが、とうとうスマートフォンに機種変更。最近になって、LINEを使い始めた様子だ。さんまさんは以前にも、「LINEやスマホは時間を食いすぎる。テレビの一番の敵はスマホでは」という感想を述べていた。

 東京工科大学が、2015年度新入生を対象に実施した「コミュニケーションツール利用実態調査」(2015年5月)によると、現在利用しているSNSはLINEが93.7%でトップ。次いでTwitterが71.6%と続いた。

 また、普段友人とのメッセージのやりとりで利用している連絡方法について複数回答で尋ねたところ、LINEのメッセージが92.6%でトップ。携帯電話・スマートフォンのメールは前年の71.4%から48.2%にまで減少している。最もよく利用する連絡方法について単一回答で尋ねたところ、80.9%がLINEのメッセージと回答。もはや、大学生のメインの連絡手段はLINEに移り変わっているのだ。

 10代のLINEにおけるコミュニケーションは独特だ。大人世代のように文章でやり取りするのではなく、単語や文節単位でやり取りすることが多いのだ。10代はLINEをリアルタイムでやりとりするため、相手を待たせないようにという配慮などから、単語単位で次々に入力する。たとえば以下のようなやりとりで、文章でのやりとりはほとんど見られない。

A「×チャンネル」
A「見て」
A「◎◎出てるよ」
B「マジで」
B「ほんとだ」
B(サンキュースタンプ)
A「かっこいい~!」
B(ハートスタンプ)

 スタンプで感覚的に素早くコミュニケーションできるLINEは確かに便利だ。しかし、LINEに代表されるスマホやSNSによるコミュニケーションばかりに頼ることによって、欠落するものもあるようだ。今の10代にどのような影響が出ているのかについて見ていこう。

言いづらいことはすべてネット頼み

 大人世代には、友人や恋人などの自宅に電話をかける時、相手の親が出るかもしれないと考えて緊張した覚えがある人は多いだろう。スマートフォンが普及したため、いつでも本人に直接連絡できるため、そもそもこのような体験は減ってしまった。

 言い出しづらいことを言うのは誰でも気が重いもの。特に欠席や欠勤などの申し出は、嫌な顔をされる可能性もあるため、電話をかける時に勇気がいる。ところが、最近の大学生はゼミの欠席もスマホのメールで直接教授に送ってくるという。タイトルも名乗ることもなしで「欠席します」という本文だけが届き、「友達でもないのに」と教授は苦い顔をしていた。

 それだけでなく、最近は別れ話もLINEなどで行われることが多いという。アンケートサイト「みんなの声」を使った調査(2014年11月)によると、別れ話を切り出す場所は、1位が「車」(25.8%)だったが、2位は「直接会わずに別れる」(24.0%)となっていた。つまり、LINEやメールなどで別れ話を切り出すというわけだ。会って話すと相手に泣かれたり、嫌な思いをするかもしれない。しかし、会わずに済ませられれば、嫌な思いもしないし楽というわけだ。

 LINEで別れ話を切り出したことがあるという高校3年女子A美は、「直接切り出してごねられたら面倒だし、LINEならブロックすれば済む」とさばさばと語る。「もう用はないので特に話したくないから。別れた後は他人」と言われて驚いてしまった。

 10代ではないが、新社会人でも同じようなことが起きているようだ。ある人が、新入社員B介の驚くべき生態について教えてくれた。欠勤の連絡はメールのみ。折り返しかけても電話には出ないというのだ。後日聞くと、「具合が悪くて寝ていたので……」と答えたという。

 おまけに、隣の席に座っている自分に用がある時でも、直接話しかけるのではなくてチャットでメッセージを送ってくるという。「言いづらいことは楽なメールで済まそうとしている。仕事でちょっとしたミスをした時も黙っていたので腹が立った。嫌なことは避けたいという姿勢が見えて心配」。

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