ホームランか、三振か--LINE顧問・森川氏を振り向かせた変人起業家 - (page 2)

井指啓吾 (編集部)2015年09月25日 08時30分

neeboorの未知なる可能性

--ビジネス面は一旦脇に置いて、お二人はneeboorにどのような可能性を感じていますか。

森川氏:まず柳田さんにお聞きしたいのが、neeboorが成長した未来に、人々の生活はどう変わるのか。neeboorがある生活とない生活の違いはなんでしょう。

柳田氏:たとえば「地域」に着目すると、特に主婦の方々は、新聞の折り込みチラシを見て、「今日はこのスーパーのこの商品が安い」などの情報を知り、実際にスーパーに赴いています。それに対抗して、neeboorでタイムセールの情報などを場所に紐づけてリアルタイムに表示したりすれば、既存のものにとって代わる可能性があるかなと思っています。


森川氏:それはTwitterやFacebookではダメですか。

柳田氏:先ほど言った“つながり方の軸”の問題で、合う、合わないがあります。Facebookは現実のつながりが前提だから、あまりふざけたことを言えない。僕の場合、周りの大人はビジネスの話ばかりしています。また、僕は独身なんですが、周りは家族旅行の写真ばかりで……。そういうのが合う人もいれば、そうじゃない人もいます。

 Twitterは“気軽感”があり、必要ではない情報がどうしても多くなる。情報の価値を考えないといけません。でも、少し自由に、“おしゃべりのようなやりとり”もできるようにしたいです。各地の天気予報の実況などもできれば面白いと思います。

森川氏:ポイントの1つは「実況」ですか。

柳田氏:そうです。「場所」が紐づいているので、「いまここでやっていること」が大事。家に帰ってから日記のようにコメントをする人もいますが、リアルタイムで発信してもらうことを第一に考えています。

森川氏:それは位置情報を設定したTwitterみたいなものですね。neeboorはFacebookよりもTwitterに近いと思います。なんとなく寂しいから誰かとつながりたくてシャウトする人がいれば、一方で、なにか意味がある情報を多くの人に伝えたくてシャウトする人もいると。

 その延長線上にある未来はどういったものでしょうか。

柳田氏:neeboorで近所の人たちでコミュニティを作って、そのままリアルでも交流できるような感じにしたいです。個人的には、近所のコミュニティの人たちと飲みたい。

森川氏:失いかけた地元の温かいコミュニティのようなものをneeboorでバーチャルに作り上げて、そこからリアルにつなげるようなイメージですね。各地域のコミュニティが活性化することが、このサービスの成功につながる?

柳田氏:多くのコミュニティサービスはネット上に場があって、100人いればそれなりに楽しい。でも、neeboorはロケーションベースのコミュニティなので、近くに人がいないと楽しくなくて、ユーザーはすぐに離脱してしまいます。

 楽しんでもらえるような工夫を色々としていますが、ある程度の母数をそろえてからじゃないと厳しいと感じます。そこをどうやっていくか……。


森川氏:LINEの経験でいうと、人口密度が大事です。たとえば、日本中に10万人のユーザーがいるよりは、赤坂に10万人のユーザーがいる方が意味がありますよね。赤坂にいるほとんどの人が使うということですから。“ある限定したエリアでみんなが使い始める”ようなことが各地域で起こり始めると「もうコレがないと生きていけない」となるのでは。

 ミニコミ誌のような世界が融合するといいのかも。地元にある店の“チラシのようなもの”をneeboorに掲出しておいて、実際にそのお店に行くと割り引きしてもらえる、みたいな。ビジネスとして使えると思うし、ユーザーに“発見する喜び”も提供できます。地域のニュースを載せるのもいいかもしれない。

 こういうことは、多くの起業家はもちろんビジネスとして進めますが、柳田さんの場合は、これこそが人生といった感じ。サービスと柳田さんの境目がない。サービスに関して怒るのは、柳田さんの人生そのものに対して怒っているような罪悪感にとらわれます。

 そして、だからこそ、柳田さんの頭の中が複雑だとサービスも複雑になるんですよね(笑)。

柳田氏:システムをもう少し簡単にしようと社内で話しています。

森川氏:柳田さんのようなタイプの人が作るものは、その複雑さが醍醐味でもあります。だから、このままでいいのかな……とも思います。

柳田氏:本当に難しいです。機能的な要素が多いと、ユーザーにはわかりにくくて、コアな人しか使ってくれなくなる。しかし、あまりにもシンプルすぎると薄っぺらくなってしまう。そのバランスを考えています。

森川氏:たとえば柳田さんがニュースサイトを運営したとすると、普通の人が興味をもたないようなものを取材して記事にすると思います。で、逆にそれにグっとくる人もいて、そことは“つながる”ような感じなんでしょうね。ある意味、エンジニアでもあるけど、編集長でもあるみたいな。そういうところが、良くも悪くもこのサービスなので、とことん突っ走るしかない。

柳田氏:大衆受けするようにしているつもりなのですが。

森川氏:それは柳田さん自身が大衆受けするようにならないと、結構厳しいんじゃないかと思います。そういう人を雇ってもいいかもしれない。でも、そういうの納得しなさそうですよね(笑)。

柳田氏:自覚はあります。

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