ドイツ・ベルリンで開催されている家電見本市「IFA 2015」でソニー代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の平井一夫氏は、現地時間9月2日に行われた同社プレスカンファレンスの終了後、日本の報道陣のインタビューに応じた。
――今回のIFA 2015では、Samsungをはじめとした大手企業がIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を前面に打ち出しているが、ソニーは、IoTをキーワードにしてもう少し白物家電に軸足を移す考えはないのか。
現時点で、白物家電に対して具体的なアクションはない。だが、IoTを軸にして、白物家電など既存の分野にソニーとして参入することでソニーらしさやソニーのイノベーションが提供できる場合には参入する可能性もあるだろう。不動産ビジネスに参入したのも一例である。ソニーとしての差異化できるという点がポイントである。
――今回のIFAでは、「Xperia Z5」シリーズに3つのラインアップを用意したが、その狙いは何か。
違うサイズでさまざまなユーザーに異なる用途で使っていただくようにした。ソニーが差異化する技術についてはどの製品でも使っていただけるようにしている。スマートフォンユーザーが多様化しており、大きさを重視するユーザー、画質を重視するユーザーなど幅広いユーザーに対応できるようにした。
――今後のソニーのエレクトロニクス製品の方向性を今回のIFAで示せたのか。
ソニーがこれから挑戦していくなかで、変わらないものがあるとすれば、全世界のお客様に対してさまざまなイノベーションを盛り込んだコンシューマーエレクトロニクス製品を出し続けること。これはソニーのDNAであり、使命である。期待に応えられるような製品を出したい。
ハイレゾ対応ヘッドホンの「h.ear」は、いい音を楽しんでもらうという狙いとともに、ファッショナブルに自己表現をしたいお客様のニーズにマッチする感性価値を高めた製品である。成長事業に位置付けている半導体事業は、エレクトロニクス分野の事業であり、エレクトロニクス全体がソニーの成長ドライバーになっていないというわけではない。
――今回のIFAで液晶テレビはHDR(High Dynamic Range)を押し出していたが、UHD(Ultra High Definition)についてはどう考えているか。
UHD Blu-rayについて今日発表するものはないが、お話しできる段階がくれば、適宜話したい。UHDに対応したパッケージコンテンツについては、ソニー1社の話ではなく、さまざまなステークホルダーを交えた業界全体での取り組みが重要になる。放送業界、エレクトロニクス業界、コンテンツクリエーションの業界を交えた形で、ひとつのスタンダードを作り上げていかなくてはならない。これが正しい方向である。
――1月のCESでは、自動車関連事業への取り組みに言及していたが、今回はそれほど触れていない。進捗はどうか。
自動車関連事業については長いスパンで計画を進めていかないといけない。それに向けた準備や自動車メーカーとの対話を進めている段階だ。だが、まだ発表できる状況にはない。ただ、ソニーが持つイメージセンサがさまざまな形で自動車産業に入っていけると考えている。また、ハイレゾ対応オーディオへの取り組みも進めており、自動車のなかでハイレゾを楽しんでもらう。
――ソニー全体としてハイレゾの比率は高まっているのか。
ハイレゾ対応のウォークマンの比率はどんどん高まっている。また、カーオーディオのハイレゾ化でさらにハイレゾ市場が広がったといえる。ハイレゾ対応の音源も増えている。ハードウェア、ソフトウェアを含めたハイレゾ対応製品群の比率はますます増えていくだろう。
ソニーにとっても、業界にとっても広がっていると考えている。中国やアジアでの浸透が遅れているという声もあるが、時間をかけてマーケティングしていきたい。ダウンロードサービスも立ち上がっており、これらの企業との協業で地道に活動をしていくことが大切だ。
――新規事業創出プログラムであるSAP(Sony Seed Acceleration Program)の今後の取り組みはどうなるか。
SAPではさまざまな試みをやっている。そのなかで、ソニーの将来の柱になっていくような芽があるビジネスが出てくると期待している。いまはアイデアの多くを市場に出し、“打率”を高めることに力を注いでいる。ソニーの本業に反映するのはまだ先というものも多いが、不動産ビジネスのような新たな試みも出てきている。
――中国の景気減速などの影響をどう捉えているか。
ソニー全体の売上高のうち7%が中国である。中国の経済の状況は注意深く見ていく必要があると考えているが、いまのところ、インパクトはそれほどない。中国のスマートフォンメーカーに向けにセンサを提供しているが、需要計画には影響はない。
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