これまでの炎上事件は、多くの場合「特定班」と呼ばれる人たちによって個人が特定されている。ログが残るある炎上事件を見ると、プロフィールから情報を得るのはもちろん、Twitterリストから出身校を突き止め、アカウント名から本名を類推。投稿していた写真からバイト先を特定し、参加コミュニティから在籍校を特定、サークルのウェブサイトから所属を特定、各SNSアカウントを照らし合わせて個人を特定し、顔写真を得ていた。その結果、炎上事件を起こした人の個人情報はまとめページにさらされている。
最近は、実名で顔写真を登録するFacebookを利用している人も多い。Facebookには出身校や在籍校、勤務先、家族などを登録、公開している人も多いはずだ。Twitterは匿名で使っていても、Facebookと投稿内容や交友関係などを照らし合わせることで個人情報は特定できることがある。
しかも、今の10代は、自ら個人情報をばらまいている。さまざまなSNSに登録し、交友関係を広げるために詳細なプロフィールや顔写真を公開しているのだ。普段はそれでも問題ないかもしれないが、有事には個人の特定につながることを忘れてはならないだろう。
以前、mixiで私のかつての勤務先だった小学校名を検索したところ、小学校のコミュニティが見つかった。「○年卒業集まれ!」というトピックが立っていたので何気なく見たところ、かつての教え子が山のように見つかった。彼らはmixiも本名で使い、顔写真を登録し、「○小学校→△中学校→□高校→◎大学」とプロフィールを詳細に公開していた。しかも、プロフィールは全体公開で誰でも見られるようにしており、心配になった。しかし、彼らだけでなく、多くの子どもたちが誰でも見られる状態で過剰に個人情報を公開している。
高校1年女子B香は、Twitterを匿名で利用している。「炎上が怖いので匿名で使っている」と胸を張るが、プロフィールには学校名のほか、部活や好きなものを多数登録している。その上、Twitter上でクラスメイトや部活の仲間と交流しており、交友関係も明らかだ。現状は問題ある投稿こそしていないが、やはり見る人が見れば個人の特定は容易だろう。
なお、写真だけでも多くの個人方法が漏れる可能性がある。たとえば、ある芸能人は自宅の窓から見えた虹の写真を投稿したところ、写り込んだ他の建物から場所が特定され、ファンに自宅まで押しかけられたそうだ。我々は自ら自分につながる情報を漏らし続けているのだ。
炎上事件や今回のような事件につながらないためには、どうすればいいのだろうか。まず、個人情報を公開しすぎないこと。公開する場合は、Facebookなら公開範囲を友達限定にしたり、Twitterなら鍵をかけたりしておくと安心だ。もちろん、友達になる相手は直接の知り合いなど信頼できる人のみにしよう。
忘れてはならないのは、公開範囲を限定していても、問題ある投稿はしないこと。たとえば今回の事件では、亡くなった人に対して「悲しくない」という、亡くなった人の家族や友人が見たら不快な書き込みをしていたことが原因となった。そのほか、犯罪や社会のルールに背く行為、意見が分かれること、他人が不快に思うことなどを投稿している場合、批判が殺到して個人情報がさらされる可能性がある。
我々はインターネットを利用しながら、多くの個人情報をばらまいている。保護者は子どものネット利用の現状をしっかりと見極め、個人情報の扱いについて教えていく必要があるだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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