(編集部注:米CNETによる「Apple Music」のレビューを前編と後編に分けて翻訳して公開します。後編は7月27日に公開しています)
Appleが手がけるサブスクリプション型音楽配信サービス「Apple Music」が、先ごろ提供開始となった。「Rdio」「Pandora」「Slacker」、そして何より「Spotify」などの競合サービスを押しのけて、音楽関連なら何でも1カ所で揃うサービスを目指している。Apple Musicは、3000万曲を誇るクラウドベースのオンデマンドストリーミングサービス、ユーザーの既存の「iTunes」ミュージックライブラリ、全世界に向けて常時ライブ放送される新しいラジオステーション、さらにはアーティスト中心のソーシャルネットワークを組み合わせた巨大複合サービスだ。そのすべてを1つのマスターアプリで利用できるようになった。
「iPod touch」「iPhone」「iPad」でOSを最新バージョンの「iOS 8.4」にアップグレードすると、デフォルトのミュージックプレーヤーが新しいApple Musicアプリに更新される。Apple Musicには、米国などで提供されていた従来の無料サービス「iTunes Radio」(今も無料で継続)や、「iTunes Match」(まだ問題が多い)の要素が取り込まれているほか、「Ping」(Appleが失敗したソーシャルミュージックの実験で、2012年に終了)の要素まで復活している。さらに、ヘッドホン大手Beatsの他の事業とともにAppleが2014年に買収したストリーミングサービス「Beats Music」の要素も盛り込まれた。
盛りだくさんと思えるだろうか。そのとおりだ。むしろ、多すぎるくらいかもしれない。膨大なミュージックカタログ、仮想アシスタント「Siri」から統合された素晴らしい音声コントロール、充実したクロスプラットフォームのサポート(2015年中に「Android」とSonosに対応予定)など、Apple Musicには多くの機能がうまく詰め込まれている。また、選曲を人の手で行うという斬新で驚くべき手法が取り入れられた。プレイリストの作成とおすすめ楽曲の選定に従事する専任のミュージックエディターや、アプリに統合された24時間365日放送のラジオステーション「Beats 1」のライブDJなどだ。
だが、こうした機能がすべて1つのアプリに詰め込まれているため、ナビゲーションやユーザーインターフェースに難がある。Appleがこれまで一貫して秀逸なデザインを重視してきたことを考えると、いささか意外なことだ。Apple Musicには、ユーザー個人の楽曲コレクションとの統合にもいくつか大きな問題がある。長年のユーザーであれば、iTunes Matchが今まで決して完全に機能しなかったことを知っているはずだ。その問題がApple Musicにも亡霊のようにまとわりついており、自分の何千曲というミュージックライブラリをクラウドに登録してApple Musicのストリーミングカタログの穴を埋めたいと考えるユーザーを悩ませている。Apple Musicでは、The BeatlesやPrinceといった大物の楽曲がいまだにストリーミングできない。
このような問題のために、サービス開始の時点では決定的なSpotifyキラーとはなっていない。とはいえ、3カ月という長期にわたって無料で使えるので、試してみる価値は十分にある(ただし、米CNETでは当面、「iCloud Music Library」をオンにしないことにした)。また、Apple Musicはソフトウェアであってハードウェアではないため、今後どこかの時点で変更や修正、場合によっては改善があると考えていいだろう。
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