UPDATE Googleは自社コンテンツを優先し、検索結果の質を落としている疑いがあると、コロンビア大学ロースクール教授で著述家のTim Wu氏が共同で執筆した論文の中で主張している。
この研究論文は、英国時間6月27および28日に開催されたオックスフォード大学の「Antitrust Enforcement Symposium」(独占禁止法執行シンポジウム)において発表されたもの。この論文が注目に値するのは、Wu氏がGoogleの元研究員で、「ネットの中立性」の提唱者であるという点だ。Wu氏はまた「The Master Switch: The Rise and Fall of Information Empires」(マスタースイッチ 「正しい独裁者」を模索するアメリカ)の著者としても知られる。
論文において、Wu氏とハーバード大学のMichael Luca氏、およびYelpのデータサイエンスチームは、Googleの自社コンテンツ優先方針がユーザーエンゲージメントを低下させていることを、比較テストを用いて明らかにした。論文によると、その結果Googleは「社会福祉に不利益を与えている」という。すなわちGoogleは自社のレビューをライバル企業のそれに優先して表示し、検索結果の質を落としているというのだ。
欧州の規制当局が目下、Googleのビジネス慣行に調査の目を向けていることから、Wu氏の論文は一定の注目を集めるだろう。ただし、Wu氏は今回の論文執筆でYelpから報酬を受け取っているとBloombergは報じている。
この論文の最大の問題点は、クリック数をユーザーエンゲージメントに直接結びつける前提に大きく依存していることだ。結果が一目で表示できるなら、余計なクリックは不要だとGoogleは反論するだろう。また、Google検索は広告市場に大きな影響力を確立しているため、売る側と買う側をつなぐユーティリティのような存在とみなされている点も注目に値する。
論文には以下のように記されている。
検索クエリに対してGoogleコンテンツを目立つ形で表示することにより、Googleは検索における自社の独占的地位を利用して、当該コンテンツの顧客を獲得することが可能だ。この自社コンテンツがオーガニック検索の結果より劣っていた場合、これは重大な懸念を生じる。この点について調査するため、われわれはユーザーに異なる検索結果を示すランダム化比較試験を実施し、Googleの現行ポリシーに沿ったGoogleコンテンツ優先の検索結果と、他社コンテンツが表示される検索結果とを比較した。すると、ユーザーがユニバーサル検索の結果(Googleの検索結果ページに目立つ形で地図が表示されるもの)に関心を示す率は、オーガニックな検索結果を表示した場合のほうが45%高いことが明らかになった。これは、検索における独占的地位を利用して自社コンテンツを優先表示することで、Googleは消費者に質の低い検索結果と関連性を提供し、それによって社会の福祉を損なっていることを示唆するものだ。
上述の試験は、2種類の検索結果を比較するという方法をとっている。1つはGoogleのユニバーサル検索、もう1つは「Focus On The User」という別のプラグインを利用したもので、こちらはGoogleのアルゴリズムを利用しながらも、「Google+」のコンテンツを優先しない検索結果を表示する。
Wu氏の論文は、Googleがビジネス関連の検索結果の質を意図的に落としており、この「意図的な無視」が市場のあらゆる方面に損失をもたらしていると主張している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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