攻めから守りへのシフトが明確に--携帯3社の夏商戦を読み解く

 ソフトバンクモバイルが発表会を開催したことで、久しぶりに3キャリアが揃う形となった、夏商戦に向けた携帯電話各社の戦略発表。だが、その内容を見ると、スマートフォンやネットワークの存在感が薄くなるなど、従来とはかなり違った傾向が見えてくる。

ポイントプログラム強化で“守り”の戦略をとるNTTドコモ

 夏商戦が目前に迫った5月中旬から下旬にかけて、携帯電話主要キャリアが新製品・サービスの発表会を相次いで開催した。2014年、今後数年間は商戦期に向けた大規模な発表会をしないとしていたソフトバンクモバイルも、社長交代の影響もあってか2015年は発表会を実施。2年ぶりに、3キャリアの発表会が開催されることとなった。

  • ドコモは今回スマートフォン8機種を発表しているが、端末自体にフォーカスはあまり当てられていなかった

 最初に発表会を実施したのはNTTドコモだ。同社は5月13日に新製品・サービスの発表会を開催しているが、その発表内容は、従来とはかなり異なる内容のものだった。最も大きな違いは、キャリアの主軸であるネットワークや端末に関する扱いが、非常に小さかったということ。特にスマートフォンに関しては、「ARROWS NX F-04G」の虹彩認証デモなどが実施されたものの、説明に割かれた時間は発表会全体からするとかなり少ないものであった。

 一方で、多くの時間をかけて説明していたのが、ポイントプログラムの改定についてだ。ドコモは従来の契約者向け会員プログラム「ドコモプレミアムクラブ」と、そのポイントプログラム「ドコモポイント」の名称を、12月1日よりそれぞれ「dポイントクラブ」「dポイント」に変更。それと同時に、従来ドコモのサービス内でしか利用できなかったポイントプログラムを、同社と提携する企業の店舗で利用できるようにするとしている。


12月よりポイントプログラムを「dポイント」に変更。ドコモ内だけでなく、提携企業の店舗でもポイントが利用できるようになる

 dポイント利用者には専用のプラスチックカード「dポイントカード」が発行され、買い物の際にそれを提示することでポイントを獲得・消費できるようになる。またドコモのクレジットカードサービス「DCMX」も、12月1日より「dカード」へと変更され、dカードでの決済時には獲得ポイントが2倍になるなど、dポイントとの連携が進められるという。

 また、これらの改定に合わせ、ドコモはコンビニ大手のローソンと提携することも発表。この提携によってdポイント・dカード移行前の6月から、ローソンでDCMXで買い物をすると3%の割引が受けられるほか、dポイントとPontaカードとのポイントの相互交換もできるようになる。


ポイントプログラムの強化に合わせて、ローソンとの提携を実施している

 過去の夏商戦戦略を振り返ると、2013年はいわゆる「ツートップ戦略」、2014年は「VoLTE」を戦略の主軸に据えていた。しかし、2015年は一転してポイントプログラムに重点を置くなど、キャリアの本業から離れたサービスを戦略の主軸としていることが分かる。ここまで大きく戦略を変えてきたのには、同社の戦略自体の変化が大きいといえるだろう。

 というのも、ドコモは先の決算発表で中期目標に向けた取り組みを発表しているが、その中で「従来の顧客獲得競争から脱却し、より長くご利用いただくことでお客様に価値を提供できるよう、競争のフェーズを転換した」と説明している。つまり、他社から高額なキャッシュバックで強引に会員を奪うなど、顧客無視で過熱し続けたキャリア間競争の反省から、既存顧客に向けたサービスを充実させ価値を高めることにより、ユーザーの離脱を防ぎながら売上単価を上げる戦略へと転換を図ろうとしている訳だ。サービスや端末の“同質化”を受けてユーザーが大きく動かないと踏んだことから、攻めから守りへと戦略を切り替えたといえよう。

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