アーティスト視点のテクノロジ活用

“未完成の場”築ける「ライブキャスト」--田村淳さんの活用から価値を探る

 YouTubeで「映像」を見る行為は、多くの生活者にとって日常的なコンテンツ消費のアクションとなった。一方で、TwitterやFacebookなどのプラットフォームと結びついて登場したVineやInstagram、そして日本では MixChannelといったアプリによって、個人が気軽に日常のワンシーンを動画として投稿できるようになった。特にMixchannelには、多くのティーンエージャーがその日常を赤裸々に投稿している。

 YouTubeからはさまざまな表現活動を発信することで広告収入を得る“YouTuber”が数多く誕生し、ニコニコ動画では“ボカロP(VOCALOIDのプロデューサー)”としての活動からメジャーデビューをするアーティストも生まれている。

 アーティスト活動にとっても「映像」発信は欠かせない要素になっている。多くのアーティストが、ミュージックビデオやバイラル(拡散)を意図したプロモーション映像をYouTubeに、ライブやイベントの中継をニコニコ動画やUSTREMで、そしてごく日常を切り取った映像をInstagramへ――といった具合にサービスを使い分けて映像を発信している。

未完成の「場」としてのライブキャスト

 そこに加わる新たなツールとして“ライブキャスト”の価値が高まっている。つい先日、Twitterがライブキャストアプリの「Periscope」をスタートさせたが、Twitterのもつリアルタイム性や拡散性を活用したライブキャストサービスとしては、1000万以上のユーザーを抱える「ツイキャス」が有名だ。

 その他にも、アイドルやその卵たちが中心となって配信をしているDeNAの「SHOWROOM」、アーティストが、当選した人だけを対象に一定時間配信をするミクシィの「きみだけLIVE」、公式アカウントを持つアーティストがアカウント上で配信できるLINEの「LINE LIVE CAST」などが存在する。

 こうしたサービスでは、アーティストによる配信が日々行われており、視聴者もしくはファンとの密なコミュニケーションが発生している。


動画関連サービスの種類と、その配信方法のイメージ

 ライブキャストは、完成した映像作品の置き場ではなく、開かれているイベントの中継ツールでもない。リアルタイムにオンライン上に発生する未完成の「場」である。そこには、完成している作品を“提供する側”と“視聴する側”という構図ではなく、場を提供する者と訪れる者とが関わりあって「場」を完成させ、価値を高めるという構図がある。

 市場を「場」と捉え、生活者を“商品やサービスを単に消費する存在”としてではなく“価値を創造するパートナー”として認識するという概念を「価値共創」と呼ぶが、まさにライブキャスト上では価値共創が行われているように感じる。そして、各サービスが提供する、コメント機能や投げ銭的に利用可能なさまざまなアイテムなどがそれを媒介している。

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