仮想通貨「ビットコイン」の今--マウントゴックス破綻から1年 - (page 2)

日本国内で増えるビットコイン事業者

 国内ではビットコイン関連のサービスを提供する事業者が増えてきている。人生のストーリーを投稿できるサイト「STORYS.JP」などを運営するレジュプレスは、2014年8月にビットコインを最短10分で購入できるウォレットサービス「coincheck(コインチェック)」を公開した。アプリも提供しており、ビットコインの売買から送金、支払いまでをスマートフォンで完結できる。また、11月にサービスを開始した取引所は、約5カ月で3000人に利用され、月間取引額が1億円を超えた。


「coincheck」

 同社は、ECサイトが10分でビットコイン決済を導入できるサービス「coincheck for EC」も提供している。発行された数行のコードをサイトに適用するだけで利用でき、基本利用料は無料で決済手数料は1%、外貨両替手数料もかからない。日本円に換金して入金されるためビットコイン価格変動のリスクもないとしている。こちらは2月時点で約150社に導入されているという。


レジュプレスの大塚雄介氏

 「未来から逆算してインフラになりうるテクノロジを手がけたかった。ECが普及しネットで物を買う文化はできたが、決済や物流など解決すべき課題はまだある」――レジュプレスの大塚雄介氏はビットコイン事業に参入した狙いをこう語る。coincheckでは、ビットコインを誰もが簡単に使える“身近な存在にする”ことをミッションにサービスを運営しているという。

 この一方で、投資の視点でビットコインを取り扱うのがシンガポールに拠点を置く「Quoine(コイン)」。FXプラットフォーム事業者などで長年エンジニアをしていたMario Gomez Lozada氏が立ち上げたビットコイン取引所で、「トレーダーに求められる機能やサービスを網羅していることが強み」(Lozada氏)だ。1月末時点で5000アカウントを超え、1日の流通額は400~500BTCに及ぶという。


「Quoine」

 実はQuoineのユーザーの9割は日本からアクセスしているのだという。そこで、同社では2014年に日本にも拠点を設けて本格的にサービスを開始した。Lozada氏は、日本は経済規模の大きさや、世界的に見た日本円の価値の高さから、今後もビットコイン市場として成長を期待できると話す。


「Quoin」の代表を務めるMario Gomez Lozada氏

 同社は2014年に国内外の個人投資家やヘッジファンドなどから総額2億円を調達した。今後はトレーダー向けの機能を充実させることで流通額を上げていきたい考え。日本の事業者との提携などを通じてエコシステムを構築し、インドネシアやフィリピンなど、他のアジア諸国の決済事業者とも連携しながらグローバル展開を加速させたいとしている。

 このほかにも国内には、「bitFlyer」「CoinPass」「BTCボックス」「ビットバンク」「Bi得」などのビットコイン事業者が取引所やウォレットサービスを展開している。しかし、事件によって印象の悪い日本では、このままビットコインが自然に普及していくとは考えにくい。いかに革新的な技術であっても、生活に欠かせない金銭を信用できないところには預けられないからだ。

政府は「暖かく見守る」姿勢--協会で健全化へ

 では、国はビットコインをどう見ているのか。政府はビットコインを「通貨」とは認めておらず、現在は金などに近い「物」という扱いをしている。しかし、そのポテンシャルの高さは評価しており、当面は規制は設けず「暖かく見守る」姿勢を見せている。また、ビットコインで商品などを購入した際には消費税がかかるが、ビットコインの取引き自体には課税しない方針だ。

 日本政府観光局によれば、2014年の訪日外国人は1300万人を超えている。急増する訪日外国人旅行者の消費を取り込むためにビットコイン決済を導入する店舗が増えていることから、政府も店舗でのビットコイン決済をよりスマートに実施できる環境を整備したいという狙いがあるようだ。また日本でいち早くビットコインを普及させることで、先進性もアピールできる。ただし、マネーロンダリングなどの懸念は消えない。そこで政府は各社に業界団体を設立して健全化を目指すよう呼びかけた。


政府は特段の規制を設けない方針(「楽天金融カンファレンス」のセッションより)

 これを受け、ビットコイン事業者である、bitFlyer、クラケン日本法人、コインパス、レジュプレス、ビットクの5社は、2014年10月に日本価値記録事業者協会(Japan Authority of Digital Assets:JADA)を発足した。自民党の方針に則った提言書に基いて作られた協会で、ガイドラインの作成や各社が独自構築したシステムの連携、消費者保護の窓口の設置などを進める。ビットコインを悪用した“ブラックリスト入り”のユーザーを共通で弾き出す仕組みなども設けているという。

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